はじめに
モニタリングとアラート設定は、システムの安定運用と問題の早期検知にとって非常に重要です。本記事では、Amazon CloudWatchを活用してAWS環境における可観測性を向上させるためのベストプラクティスについて、初心者でも理解しやすく解説します。
CloudWatchの役割と重要性
AWSインフラの運用において、モニタリングとアラート設定は不可欠な要素です。Amazon CloudWatchは、リソースのパフォーマンスや利用状況を監視するための強力なツールであり、異常が発生した際には迅速に対応するためのアラート機能も提供しています。
このことでシステムの安定性が向上し、可観測性を強化できます。本記事では、CloudWatchを使ったモニタリングとアラート設定のベストプラクティスを紹介します。
CloudWatch Metricsの基本設定
CloudWatch Metricsを利用することで、システムの内部状態を可視化し、安定運用に貢献できます。この考え方はオブザーバビリティの向上にもつながります。 CloudWatch MetricsはAWSリソースの状態を把握し、運用の最適化に重要な役割を果たします。このセクションでは、モニタリングの基本設定について説明します。
モニタリングの基本概念
CloudWatch Metricsの収集頻度には、「基本モニタリング」(5分間隔)と「詳細モニタリング」(1分間隔)があります。基本モニタリングはコストを抑えつつリソースの状態を大まかに把握するのに適しています。一方、詳細モニタリングはより短い間隔でデータを取得できるため、精密なパフォーマンスの把握や即時反応が必要なシステムに適しています。
CloudWatch Metrics(メトリクス)は、AWSリソースの性能や状態を数値化して表現するもので、システムの健康状態を把握するための重要な指標です。例えば、EC2インスタンスのCPU使用率やS3バケットのリクエスト数など、様々なメトリクスを取得することができます。
CloudWatchでは、これらのメトリクスを定期的に収集し、時間の経過と共にパフォーマンスを追跡することが可能です。
主要メトリクスの選び方
リソースタイプ | 主要メトリクス | 説明 |
---|---|---|
EC2インスタンス | CPU使用率 | インスタンスの負荷状況を把握するための指標です。 |
RDS | データベース接続数 | 現在の接続状況を監視し、負荷の増加を検知します。 |
S3バケット | リクエスト数 | S3に対するリクエスト数を監視し、アクセス状況を把握します。 |
ロードバランサー | リクエストレイテンシ | 負荷分散の効果と遅延を確認するためのメトリクスです。 |
モニタリングの対象とするメトリクスを選ぶ際は、リソースごとに重要なパラメータを見極めることが大切です。例えば、EC2インスタンスの場合、CPU使用率やメモリの使用量、ディスクのI/O、ネットワークの送受信量といった指標が代表的です。
これらをモニタリングすることで、リソースが過負荷になっていないかを把握し、必要に応じてスケールアップやスケールアウトを行う判断材料とすることができます。
メトリクスフィルターの活用例
CloudWatch Logsから得られるログイベントを基に、特定の条件を満たすメトリクスを生成することも可能です。
例えば、特定のエラーログの出現回数をメトリクスとして可視化することで、システム内で発生する問題の早期発見が可能になります。メトリクスフィルターは、カスタマイズ性が高く、実務で非常に役立つ機能です。
アラート設定のベストプラクティス
アラート設定は、リソースの異常を素早く検知し、対応するための重要な要素です。ここでは、CloudWatchでのアラート設定とそのベストプラクティスを紹介します。
アラートの作成と通知設定
以下に具体的なアラート設定手順を示します。
- CloudWatchコンソールにアクセスします。
- [アラームの作成] をクリックし、監視したいメトリクスを選択します。
- 閾値を設定し、SNSトピックを利用して通知先を指定します。
- 通知を設定し、異常が検出された場合に受け取る通知内容を決定します。
例えば、EC2インスタンスのCPU使用率が80%を超えた場合に通知する設定を行うことで、リソースの負荷が上がった際に素早く対処することが可能です。
CloudWatchアラームは、設定した条件に基づいてSNS(Simple Notification Service)を通じて通知を送ることができます。SNSはAWSで提供される通知サービスであり、システムで発生したイベントに基づいて電子メールやSMSを送信することが可能です。例えば、EC2インスタンスのCPU使用率が80%を超えた場合のアラート設定により、リソースの負荷が上がった際に迅速に対処できます。
また、エラーや異常が発生した際のアクションとして、自動的にインスタンスを再起動するなどの措置も検討できます。
アラート閾値の設定と異常検知
アラート閾値を設定する際には、単に異常の発生を検知するだけでなく、システムの内部状態を正確に把握するオブザーバビリティの視点が重要です。以下では、具体的な閾値設定の方法について説明します。 アラート閾値を設定する際には、具体的な数値の選定が重要です。たとえば、EC2インスタンスのCPU使用率が常に70〜80%に達する場合、それが正常かどうかを過去のデータから判断します。
過度なアラートを防ぐためには、異常の頻度を考慮して閾値を調整し、デッドバンド(ヒステリシス)を導入することが有効です。例えば、CPU使用率が一定時間連続して高い場合のみアラートを発する設定にすることで、ノイズを減らすことができます。
具体的には、以下のような基準を考慮します。
-
CPU使用率
通常は70〜80%を超えた場合にアラートを設定し、リソースの負荷状態を確認します。
-
メモリ使用率
メモリの使用率が90%を超えるとパフォーマンス低下の兆候となるため、適切なアラートを設定します。
-
ディスクI/O
ディスクの読み書き速度が大幅に低下することがないように、I/Oの指標にも注意を払いましょう。
適切な閾値を設定するためには、単なるデフォルト値を使うのではなく、環境固有のパターンを把握して、その上で最適な値を設定することが求められます。 アラートの閾値を設定する際には、過度に敏感にならないよう注意が必要です。頻繁にアラートが発生すると、ノイズが増えて本来対応すべき異常を見逃してしまう可能性があります。
適切な閾値を設定するためには、過去のデータを基に正常範囲を定義し、異常が発生したときのみアラートを発するようにします。
ノイズの抑制とメンテナンスウィンドウの活用
意図しないアラートを抑制するために、特定の時間帯にアラートを無効化するメンテナンスウィンドウを活用することが有効です。
その結果、計画的なメンテナンス中に不要なアラートを回避し、運用チームの負担を軽減することが可能です。
ダッシュボード構築による可視化
CloudWatch Dashboardを利用することで、複数のメトリクスを視覚的に管理し、システム全体の状態を把握することが可能です。このセクションでは、効果的なダッシュボードの構築方法について解説します。
CloudWatch Dashboardの使い方
CloudWatch Dashboardは、複数のメトリクスを一元的に表示することで、システム全体の健康状態を視覚的に確認するためのツールです。
ダッシュボードはカスタマイズが可能で、モニタリング対象のリソースを自由に追加することができます。これにより、重要なメトリクスを一目で確認できる環境が整います。
効果的なダッシュボード例
効果的なダッシュボードの例として、EC2インスタンスのCPU使用率、RDSのクエリ実行時間、ロードバランサーのリクエスト数やエラー率などがあります。
これらを適切に配置することで、インフラ全体のパフォーマンスをリアルタイムで把握しやすくなります。
リアルタイムモニタリングのポイント
即時反応が必要な環境では、リアルタイムにメトリクスを表示することが重要です。CloudWatch Dashboardを使用することで、異常が発生した際に迅速に対処するための情報を視覚的に得ることができます。
また、アラートと連携することで、重要なイベントに即座に気づける体制を整えましょう。
Logs Insightsによるインサイトとトラブルシューティング
CloudWatch Logs Insightsは、ログデータを分析して問題の原因を特定するための強力なツールです。ここでは、Logs Insightsを使ったトラブルシューティングの方法を紹介します。
Logs Insightsの概要
さらに詳しく知りたい方は、次の記事もご覧ください。
CloudWatch Logs Insightsは、CloudWatch Logsに保存されたログデータをクエリを使って分析できる強力なツールです。
その結果、ログを簡単に検索し、問題の原因を特定することができます。Logs Insightsを活用することで、通常のメトリクスでは把握しにくい詳細な情報を得ることができます。
基本クエリ例
例えば、特定のエラーメッセージを含むログを検索したり、指定した時間範囲内のログ数をカウントするなど、Logs Insightsのクエリを使えば多様な分析が可能です。基本的なクエリ構文を理解することで、より効率的にトラブルシューティングを行えるようになります。
パフォーマンス低下のトラブルシューティング
パフォーマンスが低下している場合、Logs Insightsを使って問題の根本原因を特定することができます。例えば、特定のインスタンスでエラーログが頻発している場合、そのインスタンスに関連するメトリクスを調査することで原因を追跡します。このように、Logs Insightsと他のCloudWatch機能を組み合わせて使用することで、トラブルシューティングの精度を向上させることが可能です。
まとめと参考リソース
この記事では、CloudWatchを利用したモニタリングとアラート設定のベストプラクティスについて解説しました。次に、さらなる理解を深めるための参考リソースを紹介します。
まとめ
Amazon CloudWatchを活用したモニタリングとアラート設定のベストプラクティスを通じて、AWSインフラの安定性と可観測性を高める方法について解説しました。適切なメトリクスの選定、アラートの設定、そしてダッシュボードの活用により、運用チームは効率的にシステムの状態を管理し、異常に迅速に対応することができます。
参考リンク
【番外編】USBも知らなかった私が独学でプログラミングを勉強してGAFAに入社するまでの話
プログラミング塾に半年通えば、一人前になれると思っているあなた。それ、勘違いですよ。「なぜ間違いなの?」「正しい勉強法とは何なの?」ITを学び始める全ての人に知って欲しい。そう思って書きました。是非読んでみてください。
「フリーランスエンジニア」
近年やっと世間に浸透した言葉だ。ひと昔まえ、終身雇用は当たり前で、大企業に就職することは一種のステータスだった。しかし、そんな時代も終わり「優秀な人材は転職する」ことが当たり前の時代となる。フリーランスエンジニアに高価値が付く現在、ネットを見ると「未経験でも年収400万以上」などと書いてある。これに釣られて、多くの人がフリーランスになろうとITの世界に入ってきている。私もその中の1人だ。数年前、USBも知らない状態からITの世界に没入し、そこから約2年間、毎日勉学を行なった。他人の何十倍も努力した。そして、企業研修やIT塾で数多くの受講生の指導経験も得た。そこで私は、伸びるエンジニアとそうでないエンジニアをたくさん見てきた。そして、稼げるエンジニア、稼げないエンジニアを見てきた。
「成功する人とそうでない人の違いは何か?」
私が出した答えは、「量産型エンジニアか否か」である。今のエンジニア市場には、量産型エンジニアが溢れている!!ここでの量産型エンジニアの定義は以下の通りである。
比較的簡単に学習可能なWebフレームワーク(WordPress, Rails)やPython等の知識はあるが、ITの基本概念を理解していないため、単調な作業しかこなすことができないエンジニアのこと。
多くの人がフリーランスエンジニアを目指す時代に中途半端な知識や技術力でこの世界に飛び込むと返って過酷な労働条件で働くことになる。そこで、エンジニアを目指すあなたがどう学習していくべきかを私の経験を交えて書こうと思った。続きはこちらから、、、、
エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。
関連記事
2020.02.25
完全未経験からエンジニアを目指す爆速勉強法
USBも知らなかった私が独学でプログラミングを勉強してGAFAに入社するまでの話
- キャリア・学習法
- エンジニア
2023.03.20
クラウドエンジニアってどんな職業?年収や将来性は
今回は、クラウドエンジニアが「きつい」「やめとけ」と言われる理由の他、年収や将来性について解説します。
- インフラエンジニア
- キャリア・学習法
2023.05.26
【実践】TerraformのinstallからAWS EC2の作成〜ssh接続までを実践してみた
Terraformとは、インフラストラクチャを管理するためのオープンソースのツールです。こちらの記事では、Terraformを使用してAWSのEC2を作成し、ssh接続するまでの流れをご紹介します。
- AWS
2023.03.01
インフラエンジニア将来のキャリアパス SREや上流工程
インフラエンジニアは、ネットワークやサーバーといったITインフラを支える大切な存在です。今やなくてはならない人材とも言えます。活躍の場が広がっているからこそ、キャリアパスは重要です。
- インフラエンジニア
- キャリア・学習法