ネットワークの仕組みについて勉強をしていると出てくるMACアドレスとIPアドレスですが、どちらも同じアドレスです。では、どちらか片方を有しているとインターネット通信が行えるのか?というとそうではなく、両者とも必要となってきます。
MACアドレスとIPアドレスの役割の違いについて理解することができれば、なぜインターネット通信において両者が必要となってくるのかが理解できるため、今回はMACアドレスとIPアドレスの違いについて解説を行います。
MACアドレスとは?
MACアドレス(Media Access Control Address)とはOSI参照モデルの第二層にあたる、物理的に隣接する機器同士の通信を行うためにデバイス製造時に割り当てられる一意の識別子です。
メーカーごとに一意に割り当てられた24ビットのOUI(ベンダコード)とベンダ(メーカー)が重複しないように管理を行う24ビットのベンダ管理番号の計48ビットで構成されており、09、AFの16進数で表されます。このOUIはアメリカ合衆国に拠点を置くIEEE(アイ・トリプル・イー)が管理をしており、公式ページのSearch for an AssignmentからMACアドレスを入力することで製造メーカーを調べることができます。
OS別のMACアドレスの確認方法については以下の記事で解説されています。
https://envader.plus/article/92
IPアドレスとは?
IPアドレス(Internet Protocol Address)とはOSI参照モデルの第三層にあたる、インターネット通信を行う際に機器を識別するために割り振られる識別子です。
現在IPアドレスには「IPv4」と「IPv6」の2つのバージョンが存在します。IPv4は1983年頃から使用され、約43億個のIPアドレスが使用できます。しかし、近年の急速なモバイル機器などの普及により既にほぼすべてのIPアドレスが割り当てられ、新たに割り当てることができないIPv4の枯渇が問題となりました。この問題を回避するために作られたのがIPv6でIPv6では43億個の4乗である約340澗個のIPアドレスが使用できるようになりました。ですが、IPv4とIPv6では仕様の違いなどから普及が進んでおらず、現在もIPv4が主流となっています。そのため枯渇を緩和させるために行われているのがグローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの使い分けです。
グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの違い
IPアドレスにはグローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスが存在します。両者の違いについて解説を行います。
グローバルIPアドレス
グローバルIPアドレスとは対インターネットで通信を行う際に使われる識別子です。
全世界で一意となり重複することはなく、Webサイトを閲覧するなどインターネット接続をする際に必ず必要となります。言い換えるとグローバルIPアドレスがない場合はインターネット接続は行えません。一般的にグローバルIPアドレスは回線を契約した際にプロバイダーから割り当てられます。
プライベートIPアドレス
プライベートIPアドレス(またはローカルIPアドレス)はローカルネットワーク内で使われる識別子です。
一般家庭での使用を例にあげると、3人家族の家庭でプロバイダーと1回線の契約を行います。この時プロバイダーから割り当てられるグローバルIPアドレスは1つですが、この家庭では1人1台のPCを持っており、3台全てをインターネット接続しなければなりません。ですが、先ほど説明した通りインターネットで通信を行う際は重複しない一意のグローバルIPアドレスが必要となるため、3つのグローバルIPアドレスが必要となり、グローバルIPアドレス(IPv4)が枯渇してしまいます。
この時使われるのがプライベートIPアドレスです。グローバルIPアドレスを1つのルーターに割り当てます。そして3台のPCはこのルーターとプライベートIPアドレスを使用して通信を行い、ルーター経由でインターネット接続を行います。これにより、1つのグローバルIPアドレスで3台のPCをインターネットへ接続することが可能になります。言い換えるとプライベートIPアドレスは対ルーターで通信を行う際に使われる識別子といえます。
MACアドレスとIPアドレスの違い
MACアドレスは物理的に隣接する機器同士の通信を行うためにデバイスの製造時に割り当てられる一意の識別子で、IPアドレスはインターネット通信を行う際に機器を識別するためにプロバイダー契約時に割り振られる一意の識別子という事が分かりました。
両者の違いが分かった所でインターネット通信において、なぜどちらも必要なのかについて解説を行います。
IPアドレスの役割
IPアドレスはインターネット通信を行う際に機器を識別するための識別子です。
インターネット通信を物流に例えるとIPアドレスは住所にあたり、最終目的地を表します。PC1からPC2へデータを送りたい場合に発送元である自身の住所(IPアドレス)とお届け先であるPC2の住所(IPアドレス)が必要となります。お届け先であるIPアドレスがあるならMACアドレスは必要ないのでは?と思いますが、これだけでは通信を行えません。
先ほどの物流で例えると送りたい荷物をA支店へ預けてもA支店が直接PC2の自宅へ荷物を届けてくれる訳ではなく、A支店からPC2の最寄りであるB支店へ荷物の中継を行ってから自宅へ配送するためです。
MACアドレスの役割
MACアドレスは物理的に隣接する機器同士の通信を行うための識別子です。
インターネット通信では相手のネットワーク機器と直接接続されている訳ではなく、いくつも中継を行って通信をしています。この中継を行う上で必要となるのがMACアドレスであり、MACアドレスは経由地を表します。先ほどの物流で例えた際の荷物を運んでくれる支店がMACアドレスにあたります。
そのため通信の際に発送元とお届け先であるIPアドレスは変わらないのに対し、経由地点のMACアドレスは更新されながら荷物(データ)が届けれられます。
まとめ
IPアドレスはインターネット通信を行う際に機器を識別するための識別子であり、MACアドレスは物理的に隣接する機器同士の通信を行うための識別子です。
インターネット通信を行う上でIPアドレスはデータを届けるための最終目的地の役割があり、MACアドレスには荷物を届けるための中継地点の役割があります。そのためどちらか片方では通信を確立することができず、インターネット通信においてIPアドレスとMACアドレスはどちらも必要になります。エンジニアを目指す上で通信技術の基礎知識は必須となるため、役割の違いなど様々な観点から考察を行い、楽しく学びましょう。
エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。
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