
はじめに
Pythonでデータ分析を始めたいと思っていても、「何から始めればよいのか分からない」「Pythonの環境構築が難しく感じて挫折しそう」という声は珍しくありません。そんな課題を解決してくれるのが「Anaconda(アナコンダ)」です。
本記事では、Anacondaの概要から使うことのメリットやインストール方法、そしてJupyter Notebookを使用した簡単なコード記述までを分かりやすく解説します。本記事を最後まで読むと、Pythonのインストールや環境構築をスムーズに進められ、データ分析の学習をスピーディにスタートできるようになります。
それでは、一緒に学んでいきましょう。
Anacondaとは
Anacondaとは、Pythonとデータ分析・機械学習に必要なツールをまとめてインストールできるディストリビューションです。いわゆる「Python用のオールインワンセット」とイメージしていただくと分かりやすいでしょう。
どんな人に向いているか?
Anacondaは特に次のような方におすすめのツールです。
- データ分析や機械学習を目的に、Pythonをこれから始めたい人
- Pythonの環境構築を簡単に管理したい人
Anacondaにできること
Anacondaを利用すると、Pythonのインストールに加え、以下のライブラリやツールを手軽に導入できます。
Python実行ツール
- Python
ライブラリ
-
データ分析や機械学習向けの複数のライブラリ
例:NumPy、pandas、matplotlib、scikit-learnなど
ツール
- Conda(コンダ)
- Anaconda Navigator
- Jupyter Notebook
初心者が「まずはPythonでデータ分析を始めてみたい」という場合、Anacondaを使えば主要なツールを一度に整えられます。
Anacondaのツールについて
ここでは、Anacondaに含まれる主要なツールや用語を整理しながら、Pythonの環境構築がなぜ容易になるのかを一緒に理解していきましょう。
ディストリビューションとは
ディストリビューション(Distribution)とは、ソフトウェアやライブラリなどをひとまとめにして配布できる形にしたものを指します。これにより、必要なツールやライブラリを導入する手間を大幅に削減し、セットアップ作業をシンプルにするメリットがあります。
ライブラリとは
ライブラリとは、特定の機能を実装するためのコードの集まりです。これらを使うことで、自分でゼロから全てのコードを書く必要がなくなります。
Anacondaではデフォルトで搭載されているもの以外にも、他のさまざまなライブラリを追加でインストールして利用できます。目的に応じてライブラリを導入し、効率よく開発や分析を進められます。
condaとは
Anacondaをインストールすると、conda というパッケージ管理と環境管理を統合したツールが使えるようになります。これにより、ライブラリの管理やPythonの環境構築が簡単になります。
-
ライブラリのインストール・更新
Anaconda内で使用するライブラリのインストールや、アップデートを行えます。
-
仮想環境の作成や切り替え
Pythonの仮想環境を作成・管理し、プロジェクトごとに環境を分離できます。Pythonでは、異なるアプリごとに独立した環境を用意するのが推奨されており、conda を使うと簡単に環境を切り替えられます。
condaはコマンドラインで操作するため、初心者にはやや難しく感じるかもしれません。しかし、次に紹介する Anaconda Navigator を使えば、GUIでPythonの環境構築ができるため、より直感的に操作できます。
Anaconda Navigator
Anaconda Navigatorは、Anacondaに含まれるGUIツールで、Pythonの仮想環境の管理やライブラリのインストール、Jupyter NotebookやSpyderなどの開発ツールの起動をクリック操作で簡単に行えます。コマンド操作なしで環境構築ができるため、初心者にも使いやすいのが特徴です。
Anaconda Navigatorの各メニューについては後述します。
Anacondaに含まれているライブラリ
Anacondaには、データ分析や機械学習でよく利用されるライブラリがあらかじめまとめられています。代表的なものを見てみましょう。
- NumPy
- 配列や行列などの数値計算を高速に行うためのライブラリ
- 数学的・科学技術計算の基盤的機能を提供
- Pandas
- データを表形式で扱いやすくするためのライブラリ
- CSVやExcelファイルの読み書き、データの絞り込みや統合などを簡易化
- Matplotlib / Seaborn
- グラフやチャートを作成するためのライブラリ
- 視覚的にデータを分析できるよう、多様なプロットを提供
- SciPy
- 数学、科学、工学分野の高度な計算をサポートするライブラリ
- 数値最適化や統計的解析などに活用
- scikit-learn
- 機械学習の代表的なライブラリ
- 回帰や分類、クラスタリングなどの手法が簡単に使用可能
最初から多くの機能が含まれているため、実験や学習をすぐに始められることがAnacondaの強みです。
環境構築を容易にするAnaconda
環境構築とは、Pythonのプログラムを実行したり開発したりするために必要なソフトウェアや設定を、自分のPCに準備することを指します。
通常、Pythonでは「仮想環境」という仕組みを使い環境構築することが推奨されています。その作成や管理には、Pythonの基本やコマンド操作の知識が必要で、初心者がつまずきやすいポイントでもあります。
一方でAnacondaは、インストールするだけでPython環境が整う点が大きな特徴です。複雑な作業をほとんど省略できる一方で、ダウンロードやインストールにかかる容量が大きいというデメリットもあります。それでも「環境構築を手軽に管理したい」という場合には、非常におすすめのツールです。
Pythonの環境構築については次の記事で詳しく解説しています。Python環境構築や、なぜ仮想環境が必要なのか?を学べますので、ぜひご覧ください。
【超初心者向け】もう挫折しない、Python環境構築の基本を徹底解説!
https://envader.plus/article/528
Minicondaは軽量でシンプルな構成
Anacondaには、Minicondaというディストリビューションも存在します。Minicondaにもパッケージ管理ツールcondaが含まれている点はAnacondaと共通ですが、必要最小限の構成になっているため、インストールサイズが小さいのが特徴です。
Anaconda Distribution | Miniconda | |
---|---|---|
conda | あり | あり |
Anaconda Navigator | あり | なし |
パッケージ数 | 300以上 | 70未満 |
インストールに必要な容量 | 約4.4GB | 約480MB |
出典:Anaconda公式 - Should I use Anaconda Distribution or Miniconda?
https://docs.anaconda.com/getting-started/
ストレージ容量が限られている、最小限の構成にして必要に応じてライブラリなどを追加インストールしたい場合は、Minicondaがおすすめです。必要なものを後からカスタマイズして導入することで、より軽量な環境を保てます。
Anacondaのインストール
実際にAnacondaをPCにインストールしてみましょう。本記事ではWindows PCへのインストール方法を紹介します。他のOSをご利用の場合は、お使いのPCに合ったインストーラーを選択してください。
1.Anacondaをダウンロードする
はじめに、以下のサイトからインストーラーをダウンロードします。
Anacondaディストリビューションのダウンロード
https://www.anaconda.com/download/success
お使いのPCのOSに合わせたインストーラーを選択します。緑色のボタンが表示されている場合は、PCに合ったインストーラーを自動検出しているため、そちらを利用すると便利です。
2.インストーラーを実行する
インストーラーのダウンロードが完了したら、ファイルをダブルクリックして実行します。
3.各項目を選択する
インストール時の各項目を順に選択します。
-
Nextをクリックする
-
ライセンス契約に同意する
「I Agree」を選択します。
-
インストール対象のユーザーを選択する
「Just Me」を選択してNextをクリックします。
Just Meを選択すると、現在ログオンしているユーザーのみAnacondaを使えます。All Usersを選択するとPC内の全ユーザーがAnacondaを使えますが、特にこだわりがなければJust Meを選択します
-
インストール先フォルダを指定する
特に指定がなければ、そのままNextをクリックします。
-
詳細オプションを選択する
デフォルトの設定のまま「Install」をクリックします。
「Add Anaconda3 to my PATH environment variable」にチェックを入れると、Command PromptやPowerShellでAnacondaコマンドを使いやすくなります。必要に応じて選択してください。
-
インストール開始
インストールが始まるので、完了するまで待ちます。
-
インストール完了
インストールの完了後、Nextをクリックします。
こちらもNextをクリックします。
最後にFinishをクリックすると、Anacondaのインストールが完了します。
4.Anaconda Navigatorを起動する
インストールが完了すると、Anaconda Navigatorが起動します。自動で起動しない場合は、WindowsのスタートメニューからAnaconda Navigatorを選択してください。
Anaconda Navigatorの画面が表示されれば、Anacondaのインストールは完了です。
Anaconda Navigatorについて
Anaconda Navigatorでは、Anacondaが提供するさまざまな機能をGUI上で管理できます。主なメニューについて簡単に説明します。
Home
Anacondaの各アプリケーションを起動・インストールするための画面です。
「Launch」ボタンがあるものは既にインストール済みで、ボタンをクリックすると各ツールが起動します。
Environments
Anacondaで使用できるライブラリ一覧を確認できます。Pythonの環境を作成・インポートなどする操作をGUIで簡単に行えます。
Learning
Anacondaや関連ツールのチュートリアルなどを確認できます。
Community
Anacondaをはじめ、多様なツールのコミュニティサイトへのリンクが一覧で表示されます。
Jupyter Notebookを使ってみよう
Anacondaに含まれるJupyter Notebookを使用して、実際にコードを記述してみましょう。
1.Jupyter Notebookを起動する
Anaconda NavigatorのHome画面で、Jupyter Notebookの「Launch」ボタンをクリックします。
しばらくするとブラウザ上でJupyter Notebookが起動し、トップページにPC内のフォルダ構成が表示されます。
2.Jupyter Notebookのファイルを作成
-
「Documents」フォルダ内に新しいフォルダを作成します。
「Documents」を選択し、右上の「New」メニューから「New Folder」をクリックします。
任意のフォルダ名を入力します(例:「notebook」)。
-
作成したフォルダを開き、新しいノートブックファイルを作成します。
notebookフォルダを開き、右上の「New」メニューから「Python」をクリックします。
新規タブが開き、ノートブックファイルが作成されます。
3.コードを記述する
-
ノートブックの名前を変更します(例:「notebook」)。
-
ノートブック上の入力セルに以下のコードを記述し、Shift + Enterで実行します。
print("Hello! エンベーダー")
-
実行結果が表示されることを確認します。
Google Colaboratoryとほぼ同じような感覚で使用できるかと思います。今回作成したノートブックは、PC上の指定したフォルダ内に保存されます。
Anacondaでは、Jupyter Notebook以外にもさまざまなツール上でPythonを使うことができます。ぜひ、他のツールにも触れてみてください。
まとめ
この記事では、Anacondaの基本知識やインストール方法、Jupyter Notebookの使用方法について解説しました。最後に重要なポイントを振り返ります。
-
Anacondaとは
Pythonとデータ分析や機械学習に必要なツールをまとめてインストールできるディストリビューションです。
-
Anacondaの特徴
Anacondaをインストールするとデータ分析や機械学習に必要なライブラリがあらかじめ準備されており、すぐにPythonを簡単に始めたい人におすすめのツールです。
-
AnacondaのインストールとJupyter Notebookの使用
本記事ではインストール方法から、Jupyter Notebookで簡単なコード記述を試しました。
ここまでAnacondaについて解説してきました。初心者の方にも簡単に導入できることを知っていただけたかと思います。本記事がPythonを始めるきっかけとなり、さらにステップアップしていくきっかけとなれば幸いです。
参考資料
以下のリンクは、この記事で説明した手順や概念に関連する参考資料です。より詳しく学びたい方は、ぜひご覧ください。
-
Anaconda公式
-
ウィキペディア - Anaconda (Pythonディストリビューション)
-
Python Japan - PythonとAnaconda
-
IT用語辞典 - Anaconda
【番外編】USBも知らなかった私が独学でプログラミングを勉強してGAFAに入社するまでの話

プログラミング塾に半年通えば、一人前になれると思っているあなた。それ、勘違いですよ。「なぜ間違いなの?」「正しい勉強法とは何なの?」ITを学び始める全ての人に知って欲しい。そう思って書きました。是非読んでみてください。
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「成功する人とそうでない人の違いは何か?」
私が出した答えは、「量産型エンジニアか否か」である。今のエンジニア市場には、量産型エンジニアが溢れている!!ここでの量産型エンジニアの定義は以下の通りである。
比較的簡単に学習可能なWebフレームワーク(WordPress, Rails)やPython等の知識はあるが、ITの基本概念を理解していないため、単調な作業しかこなすことができないエンジニアのこと。
多くの人がフリーランスエンジニアを目指す時代に中途半端な知識や技術力でこの世界に飛び込むと返って過酷な労働条件で働くことになる。そこで、エンジニアを目指すあなたがどう学習していくべきかを私の経験を交えて書こうと思った。続きはこちらから、、、、
エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。

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