システムやネットワークの安定稼働を維持するためには、状況を常に把握し、問題が起きたら素早く対応することが必要です。そのために使われるのが「監視システム」です。
中でもZabbixは、多機能で柔軟な監視ツールとして広く知られています。
この記事では、Zabbixの基本的な機能と、どのような役割を果たすのかについて解説します。
インフラエンジニアには必要な知識の一つになるため、一緒に学んでいきましょう。
Zabbixとは
Zabbixは、オープンソースの統合監視ソフトウェアとして、ネットワーク、サーバー、アプリケーションの監視を包括的に行うことができ、2001年にZabbixソフトウェアがリリースされました。。
ZabbixはOSS(Open Source Software)として公開されているため、無償で利用することが可能です。
特に、プロセスやネットワーク、ログの監視に加え、ミドルウェアの監視も行えるため、システム全体の監視をZabbixで行えることが魅力です。
また、Zabbixは、さまざまなプラットフォームに対応していることも魅力の一つです。
2024年10月現在、リリースされている最新のバージョンはバージョン7.0.5になります。
Zabbixの企業概要と日本での展開
Zabbixを開発、メンテナンスを行なっているZabbix LLCはヨーロッパにあるラトビア共和国、リガに本社を置く企業で、Zabbixの生みの親であるAlexei Vladishev(アレクセイ・ウラジシェフ)氏によって2005年に創設されました。
日本にはZabbixの子会社としてZabbix Japanが2012年に設立され、日本国内のZabbixユーザー、Zabbixパートナーを支援するためにサポート、トレーニング、コンサルティング、パートナープログラムなど公式なサービスを提供しています。
日本のZabbixコミュニティ
日本には非公式のZabbixコミュニティサイトがあります。
このコミュニティサイトでは、Zabbixの特徴、バージョンのリリース情報、機能などがまとめられています。
フォーラムとして、実際にユーザーが困っていることに対してのやりとりなども記載されていますので、興味がある方は参照ください。
統合監視とは
統合監視とは、システム全体の状態を一元的に把握し、効率的に管理するための監視方法です。Zabbixは、この統合監視を行うためのOSSツールとして多くの企業で利用されています。統合監視は大きく分けて次の3つの要素に分けられます。
データ収集
データ収集とは、システムやネットワークの監視において、監視対象から必要な情報を取得し、それを分析や可視化、アラートなどに活用するための最初のステップです。
具体的には、サーバーやネットワーク機器、アプリケーションからCPU使用率、メモリ消費量、ネットワークトラフィックなど、システムがどのように動作しているのかを示す様々なデータを収集します。
モニタリング
モニタリングは、システムやネットワーク状態を継続的に監視し、正常に稼働しているかどうかをチェックすることです。
モニタリングでは、システムのパフォーマンスやリソースの使用状況、異常や障害が発生していないかをリアルタイムで確認します。
例えば、CPU使用率が通常の範囲内か、メモリ消費量が急激に増加していないかなどを監視します。
こうすることで、システムの異常な挙動を検知し、予想していなかったダウンタイムやシステム障害を未然に防ぐことが可能になります。
Zabbixのような監視ツールを使えば、収集したデータはダッシュボードでリアルタイムに表示され、グラフや数値として視覚化されるため、管理者はシステムの状態を簡単に把握できます。
アラート通知
アラート通知は、システムやネットワークに異常が発生した際に、管理者にすぐに知らせるための機能です。
ZabbixではAWSのCloudWatchのように、CPU使用率が高すぎる、メモリが限界に近づいている、サーバーが応答しないなど、設定された基準(しきい値)を超えた場合に、アラートを発報することができます。
通知先をシステムの担当者にしておけば、アラートを受け取った時点でシステムの異常に気づくことができるため、どう対応するかの検討、対応策の実施を迅速に行うことができます。
Zabbixではこの3つの要素を扱うことができるため、データ収集からアラート通知まで、包括的に対応することができます。
AWSが提供するサービスのCloudWatchに関しては、以下の記事にて解説しています。
CloudWatchにおける監視項目 絶対に押さえておくべきアラームとは?
また、TerraformでCloudWatchアラームを作成するハンズオン記事も作成していますので、ぜひご参照ください。
【Terraformハンズオン】EC2にCloudWatchアラームを設定してみよう!
Zabbixの動作環境
このセクションでは、Zabbixが統合監視ソフトウェアとして動作するための動作環境にはどのようなものがあるのか、Zabbixを理解する上で必要なリソースを解説します。
Zabbixの動作環境として、以下の3つが挙げられます。
Zabbixサーバー
Zabbixサーバーは、監視対象のリソースに対して実際に監視、障害検知、アラートの通知を行うサーバーのことです。
複数の監視設定をまとめて管理し、それぞれの監視対象からネットワーク経由でpingやポート監視を行います。
また、Zabbixエージェント、SNMPエージェントを通してステータス状況の情報収集を行い、その結果をZabbixサーバー内のデータベースに保存します。
保存したデータをしきい値と比較し、障害の検知、システム管理者への通知、独自で作成したスクリプトの実行もZabbixサーバーが行います。
Zabbixエージェント
Zabbixエージェントは、監視対象のリソースにインストールするソフトウェアのことです。
このZabbixエージェントを監視対象にインストールすることで、より細かい情報を収集することができるようになります。
具体的には、各OSのCPU、メモリ、ディスク容量、ネットワークの情報、アプリケーションの稼働状況を収集することができます。
Zabbixエージェントを導入していない場合、SNMPでのネットワーク機器の情報の収集、pingによる監視対象が正常に稼働しているかなどの確認が対象となり、CPU使用率などの情報は収集範囲外となってしまいます。
Webインターフェイス
Zabbixでは、各設定、収集したデータの閲覧はすべてWebインターフェイスから行います。
Webインターフェイスとは、わかりやすく表現すると「管理画面」のことです。
管理画面はブラウザを使ってアクセスできるため、専用のソフトウェアのインストールなどは必要ありません。
このWebインターフェイスはプログラミング言語のPHPで作成されている、という特徴があります。
Zabbixを理解する上で、まずこの3つがあることを理解しておく必要があります。
Zabbixサーバーのシステム要件
Zabbixサーバーを動作させるためには、いくつかのシステム要件を満たす必要があります。
システム要件は、監視対象の規模や環境によって異なりますが、基本的なポイントを解説します。
対応するOS
対応するOSは、Linux、AIX、FreeBSD、Windowsなど多岐に渡ります。
ただし、ZabbixサーバーはLinuxで開発されていることから、主にLinuxベースのOSを選択することが一般的です。
ハードウェア要件
監視項目数、監視するシステムの規模、使用するZabbixのバージョンによって左右されます。
最新のバージョン7系では、最小でも2CPU、メモリ8GiBとされています。
ディスク容量に関しては、監視する項目数、監視する期間の間隔、データを保存する期間によって変わってくるため、その規模感によって検討が必要になります。
ソフトウェア要件
こちらは主にWebインターフェイスを提供するために必要な要件となります。
WebサーバーのApacheは1.3.2以上、PHPは5.0以上が必須とされています。
こちらも利用するZabbixのバージョンによって変わるため、実際に構築する際は公式ドキュメントを参照する必要があります。
Zabbixを使う主なメリット
Zabbixを利用することで得られるメリットは、以下のようなことが考えられます。
コストの削減
OSSソフトウェアのため、コストを節約することができます。
統合監視が可能なソフトウェアは、OSSと商用ソフトウェアの2つに分類することができます。
商用ソフトウェアを利用するにはそのライセンス料が必要になりますが、ZabbixはOSSのため無償で利用することができます。
そのため、コストの発生を抑えながら、システムの統合的な監視を行うことができます。
ただし、技術サポートなどを受ける場合は、別途コストがかかってくるため注意が必要です。
機能が豊富
ZabbixはOSSであるため無償で利用することができるため、商用ソフトウェアに比べ機能が少ないのでは、と思われるかも知れません。
しかし、Zabbixは統合監視ソフトウェアのため、商用ソフトウェアに引けを取らないくらい機能が充実しています。
通常の利用方法から、オリジナルの「カスタムスクリプト」を作成して利用することで、さらに機能を拡張することも可能です。
様々な企業で導入されている
Zabbixは世界中で多くの企業に導入されており、豊富な導入事例があることも特徴です。
導入実績が多いため、Zabbixに関する情報も非常に充実しています。
導入事例の一部を次のセクションでご紹介します。
Zabbixの導入事例
Zabbixは、日本国内外で多くの企業に採用されており、その中にはNTTやKDDIといった大手企業も含まれています。
KDDIでは、約40台のZabbixサーバーを使って、約20,000台の機器を監視し、NTT Communicationsでは、約40,000台の機器をZabbixで監視しています。
このような実績があることからも、Zabbixの信頼性が高いことが分かります。
以下、Zabbixの導入事例です。
まとめ
Zabbixは、オープンソースの統合監視ツールとして、ネットワーク、サーバー、アプリケーションなど、あらゆるシステムの監視を一元管理することができます。この記事では、Zabbixの基本的な機能やその役割、動作環境について解説しました。
Zabbixは、データ収集、モニタリング、アラート通知という3つの主要な機能を通じて、システム管理者にとって重要な監視業務を自動化し、システムの安定稼働を支えます。また、KDDIやNTTなどの大手企業での導入実績を持ち、信頼性が高いことが実証されています。
今までZabbixを知らなかった方も、この記事を参考に理解を深めていただければ幸いです。
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エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。
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