はじめに
なぜIaCが重要か
インフラストラクチャをコード(IaC: Infrastructure as Code)として管理することは、現代のクラウド環境では欠かせない要素です。
例えば、手動でサーバー設定を行う際には、人為的なミスが発生するリスクがあります。IaCを導入することで、そのような手動設定によるエラーを防ぎ、インフラの構成を自動化して一貫性を保つことができます。
NetflixやGitHubなどの大手企業がIaCを活用してインフラ管理を効率化している事例もあります。IaCは手動での設定ミスを防ぎ、複雑なインフラ構成を一貫して自動化することで、効率的で信頼性の高い運用を実現します。
しかし、IaCのツールを選ぶのは簡単ではありません。特に人気の高いCloudFormationとTerraformにはそれぞれ異なる特徴があり、どちらを選ぶべきか悩むエンジニアも多いでしょう。
IaCについてはこちらの記事で詳しく説明しています。
IaCとは?IaCのメリットやデメリット、Terraformなどの構成管理ツールの特徴を紹介
記事の目的
この記事では、CloudFormationとTerraformの主な違いを整理し、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解することで、あなたのプロジェクトに最適なツールを選ぶためのガイドとなることを目指します。
このガイドは、初心者エンジニアから中級エンジニアまでのインフラ自動化ツールの選定に悩む方を主な対象としています。
CloudFormationとTerraformの基本概要
各ツールの基本的な特徴を理解することは、プロジェクトに最適な選択をする上で重要です。この章では、CloudFormationとTerraformの特徴をそれぞれ簡単に説明し、どのような場面で役立つかを紹介します。
CloudFormationとは?
AWSに最適化されたインフラ管理ツールとして、CloudFormationはどのように役立つのか、その特長を見ていきましょう。
CloudFormationは、AWSが提供するインフラ自動化のためのツールで、AWSリソースの作成、管理を効率化するために設計されています。AWSに最適化されており、AWSサービスとの深い統合が特徴です。YAMLやJSON形式のテンプレートを用いることで、AWSリソースの作成や更新を自動化し、一貫性を保つことが可能です。また、AWSサポートによる公式なサポートが受けられる点も大きな利点です。
CloudFomationについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
AWS CloudFormationでインフラをコード化する!初心者向けテンプレート作成ガイド
Terraformとは?
マルチクラウド環境の管理に強みを持つTerraformについて、その柔軟性と使用ケースについて説明します。
Terraformは、HashiCorpが開発したオープンソースのIaCツールで、マルチクラウド環境に対応しています。AWSだけでなく、AzureやGoogle Cloud、さらには多くのサードパーティのサービスとも連携できる柔軟性が強みです。TerraformはHCL(HashiCorp Configuration Language)という独自の宣言型言語を使用し、インフラをコードで記述することができます。そのため、異なるクラウドサービスを一元的に管理できる点が、多くの企業で採用されている理由の一つです。
機能・特徴の比較
CloudFormationとTerraformの違いを理解するためには、具体的な機能や特徴を比較することが不可欠です。この章では、両者のクラウド対応の柔軟性やテンプレートの管理性などを徹底的に比較します。
クラウド対応の柔軟性
どのクラウドプロバイダーに対応しているかは、ツール選びの大きな決め手です。それぞれのツールの対応範囲を確認してみましょう。
CloudFormationはAWS専用のツールであるため、AWSリソースに特化したサポートや連携が強力ですが、他のクラウドサービスに対応していません。一方、Terraformはマルチクラウド対応であり、AWS、Azure、Google Cloudなど異なるプロバイダーを一つのコードベースで管理できる点が大きなメリットです。これにより、クラウド間のベンダーロックインを避けたい場合や複数のクラウドを利用するプロジェクトには、Terraformが適しています。
テンプレートの書き方と管理性
インフラ構成の記述方式がどれだけ簡潔で管理しやすいかは、生産性に直結します。CloudFormationとTerraformのテンプレート管理性について比較します。
CloudFormationのテンプレートはYAMLまたはJSONで記述され、AWSリソースに特化した詳細な記述が可能です。TerraformのHCLは簡潔で可読性が高く、複数のクラウドプロバイダーに対応できる柔軟性があります。テンプレートの管理性においても、Terraformはモジュールの再利用性が高く、標準化された構成を作成しやすい点で優れています。
ドリフト検出と変更管理
インフラの状態が意図したものと異なる場合、どのツールがどのように対応できるかは非常に重要です。
例えば、リソースが手動で変更され、テンプレートに記述された状態と異なっているケースを考えましょう。CloudFormationでは、AWSマネジメントコンソールからリソースの状態を追跡し、設定と実際のリソース状態が異なる場合にはドリフト検出が可能です。Terraformでもリソース状態の追跡が可能で、特に変更がリソースに与える影響を事前に「plan」コマンドで確認することができます。
この働きにより、変更が意図した通りに行われるかを事前に把握し、ミスを未然に防ぐことができます。
CloudFormationは、AWSマネジメントコンソールからリソースの状態を追跡し、設定と実際のリソース状態が異なる場合にはドリフト検出が可能です。Terraformでもリソース状態の追跡が可能で、特に変更がリソースに与える影響を事前に「plan」コマンドで確認することができます。これにより、変更が意図した通りに行われるかを事前に把握し、ミスを未然に防ぐことができます。
Terraformのインストールなどはこちらの記事をご参照ください。
【実践】TerraformのinstallからAWS EC2の作成〜ssh接続までを実践してみた
コミュニティとサポートの差
オープンソースか公式ツールか、コミュニティやサポート体制が選定に与える影響を考えます。それぞれのサポート環境を比較してみましょう。
Terraformはオープンソースであり、活発なコミュニティと豊富なモジュールが用意されています。このため、多様なユースケースに対応したリソースを簡単に導入できます。CloudFormationはAWSの公式ツールであり、AWSサポートによる保証がある一方で、モジュールの柔軟性ではTerraformに劣る部分もあります。
メリット・デメリットまとめ
どちらのツールにも強みと弱みがあります。この章では、CloudFormationとTerraformのメリットとデメリットを簡潔に整理し、それぞれの違いを明確にします。
比較表
項目 | CloudFormation | Terraform |
---|---|---|
クラウド対応 | AWS専用 | マルチクラウド対応 |
テンプレート形式 | YAML/JSON | HCL(簡潔で可読性が高い) |
学習コスト | AWSユーザーにとって直感的 | 他クラウドも含めた柔軟性を持つが学習コストあり |
サポート | AWS公式サポート | 活発なオープンソースコミュニティのサポート |
ドリフト検出 | 可能 | 可能(planコマンドで確認) |
再利用性 | モジュール再利用性はやや低い | モジュールの再利用性が高く標準化しやすい |
CloudFormationのメリットとデメリット
メリット
- AWSリソースとの深い統合
- AWSサポートによる公式なサポート
- ドリフト検出機能の提供
デメリット
- AWSに特化しているため、他のクラウドサービスには対応できない
- テンプレートの再利用性がTerraformに比べて低い
Terraformのメリットとデメリット
メリット
- マルチクラウド対応による柔軟性
- オープンソースコミュニティのサポートとモジュールの豊富さ
- 簡潔で可読性の高いHCL
デメリット
- AWS専用機能に関してはCloudFormationほど深い統合がない
- 学習コストが必要な場合がある
選定のポイント
どちらのツールを選ぶべきか、具体的なプロジェクトの要件やチームのスキルセットに基づいて考える必要があります。この章では選定にあたっての重要なポイントを紹介します。
プロジェクトの規模とニーズ
プロジェクトの規模や特定のニーズによって、選ぶべきツールは変わります。どのような規模でどのツールが最適なのかを考えてみましょう。
選定の際には、プロジェクトの規模やニーズを考慮することが重要です。小規模でAWS専用のプロジェクトであれば、CloudFormationが適しています。一方、複数のクラウドサービスを利用するプロジェクトや、将来的にベンダーロックインを避けたい場合には、Terraformの方が適しているでしょう。
学習コストとチームのスキルセット
チーム全体のスキルレベルや学習にかかるコストは、ツール選定において重要な要因です。それぞれのツールの学習コストについて詳しく見ていきます。
CloudFormationはAWSユーザーにとって比較的直感的ですが、TerraformのHCLは他のクラウド環境にも対応できる柔軟性があります。チームのスキルセットや学習コストを考慮し、どちらが適切かを判断することが求められます。
運用時の利便性
運用フェーズにおいて、どちらのツールがより効率的に使えるのか、それぞれの特徴をもとに検討してみましょう。
Terraformはマルチクラウド環境を一元管理するのに優れており、インフラの変更が頻繁に行われるプロジェクトには特に適しています。CloudFormationはAWSネイティブな環境での運用において、特に簡単にスタック管理ができるため、AWSのみを利用する場合には運用が非常に効率的です。
まとめ
CloudFormationとTerraformの違いとそれぞれの利点を踏まえ、あなたのプロジェクトにどちらが適しているかを最終的に判断しましょう。
-
CloudFormationが向いているプロジェクト
- AWS専用のプロジェクトであり、AWSリソースとの深い統合が必要な場合
- 小規模で、AWSに特化したシンプルなリソース管理を行いたい場合
-
Terraformが向いているプロジェクト
- 複数のクラウドサービスを利用し、マルチクラウド環境を一元的に管理する必要がある場合
- 柔軟で標準化されたインフラ運用を目指しており、オープンソースの利点を活用したい場合
結論と総括
これまで見てきた特徴や比較結果をもとに、それぞれのツールが適している状況を総括します。
CloudFormationとTerraformにはそれぞれの強みがあり、どちらが適しているかはプロジェクトの要件次第です。AWSに特化し、シンプルなリソース管理を求めるならCloudFormationが、マルチクラウドの環境を一元的に管理し、柔軟なインフラ運用を行いたい場合にはTerraformが適しています。それぞれのツールの特徴を理解し、自分のプロジェクトに最適な選択を行いましょう。
参考リンク
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エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。
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