Memcachedとは何か?
例えるなら書店の人気コーナーのようなものです。ある書店で小説が人気だったとしましょう。小説を人気コーナーにまとめておくと、お客さんは店内を探し回ることなく欲しいものを見つけることができます。
Memcachedは、ウェブアプリケーションのパフォーマンスを向上させるための分散キャッシュシステムです。簡単に言えば、データやオブジェクトをメモリ内に一時的に保存することで、データベースやディスクへのアクセス回数を減らし、アプリケーションの応答速度を向上させます。
Memcachedは、キーと値のペアでデータを格納します。アプリケーションは、このキャッシュから直接データを取得できるため、データベースや他のデータソースへのクエリ回数が減少し、全体的なパフォーマンスが向上します。Memcachedはオープンソースであり、多くのプログラミング言語に対応しています。
インメモリキャッシュ
インメモリキャッシュやインメモリデータベースは、データをハードディスクではなく、主記憶装置(RAM)に直接格納するシステムです。これにより、データの読み書きが高速に行えるため、アプリケーションのレスポンスタイムが大幅に向上します。MemcachedやRedisなどのツールは、このインメモリ技術を活用して、高速なデータアクセスと効率的なパフォーマンスを提供します。
Memcachedの利点3つ
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パフォーマンスの向上
Memcachedはメモリ上で動作するため、ディスクベースのデータストレージよりも格段に高速です。この高速性により、アプリケーションのレスポンスタイムが大幅に改善されます。
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スケーラビリティ
Memcachedは分散システムとして設計されているため、複数のサーバーにまたがってスケールアップすることが容易です。これにより、トラフィックが増加してもパフォーマンスを維持できます。
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リソースの有効活用
データベースへの負荷を軽減することで、より多くのリソースを他の処理に割り当てることが可能になります。これは、特にリソースが限られている環境で重要です。
Memcachedは、これらの利点により、特に大規模なウェブアプリケーションやダイナミックなコンテンツを持つサイトにおいて、重要な役割を果たします。
Memcachedの基本概念
そもそもキャッシュとは何か
キャッシュとは、一時的にデータを保存するための仕組みです。このプロセスの目的は、データの再利用を容易にし、アクセス時間を短縮することにあります。例えば、ウェブページを訪問する際、ブラウザはそのページの要素(画像、スクリプト、スタイルシートなど)をキャッシュに保存します。次回同じページを訪問するとき、ブラウザはキャッシュからこれらの要素を読み込むため、ページの読み込みが速くなります。
Memcachedの主な特徴と機能
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分散メモリキャッシング
Memcachedは、分散メモリキャッシングシステムです。これは、複数のサーバーにまたがってデータをキャッシュし、全体のキャッシュ容量を拡大できることを意味します。この分散性により、Memcachedは大量のデータを効率的に扱うことができます。
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キー-値ストア
Memcachedはキー-値のペアを使用してデータを格納します。各キーは一意の識別子であり、対応する値はキャッシュされたオブジェクトです。このシンプルな構造は、データの迅速な格納と取得を可能にします。
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高速アクセス
Memcachedの主要な利点は、その高速性です。メモリベースのストレージを使用するため、ディスクベースのデータベースよりもはるかに速いアクセス速度を実現します。これは、読み込み重視のアプリケーションに特に有益です。
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容易なスケーラビリティ
Memcachedは、サーバーを追加するだけで容易にスケールアップできます。これにより、成長するトラフィックや要求に柔軟に対応することが可能です。
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言語の独立性
Memcachedは多くのプログラミング言語で利用可能です。PHP、Python、Ruby、Javaなど、さまざまな言語でのクライアントライブラリが提供されています。
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簡潔さと実用性
Memcachedは、シンプルで使いやすいAPIを持っています。これにより、開発者は複雑な設定や管理をすることなく、アプリケーションに容易に組み込むことができます。
Memcachedのこれらの特徴は、ウェブアプリケーションやデータベース駆動型サイトのパフォーマンスを大幅に向上させることができます。
Memcachedのセットアップと使用方法
基本的なインストール手順
Memcachedのインストールはシンプルです。以下は、一般的なLinuxシステムでの基本的なインストール手順です。
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Memcachedのインストール
Ubuntu/Debian系では、以下のコマンドでインストールできます:
sudo apt-get install memcached
CentOS/RHEL系では、以下のコマンドを使用します:
sudo yum install memcached
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サービスの開始
インストール後、Memcachedサービスを開始する必要があります:
sudo systemctl start memcached
-
自動起動の設定
システム起動時にMemcachedが自動的に起動するように設定します:
sudo systemctl enable memcached
これでMemcachedはインストールされ、稼働しています。
簡単な使用例とコードスニペット
Pythonを使用したMemcachedの基本的な使用例は次のとおりです。
-
必要なライブラリのインストール
MemcachedとHTTPリクエストを行うために、
memcache
とrequests
ライブラリをインストールします。pip install python-memcached requests
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Memcachedを使用したデータのキャッシュ 以下のPythonコードは、外部のAPIからデータを取得し、それをMemcachedにキャッシュする方法を示しています。
import memcache import requests # Memcachedサーバーに接続 mc = memcache.Client(['127.0.0.1:11211']) # データベースやAPIからデータを取得 url = "https://example.com/api/products/12345" response = requests.get(url) product = response.json() # データをキャッシュに保存 mc.set("product_12345", product) # キャッシュからデータを取得 cached_product = mc.get("product_12345") # データを表示 print(cached_product)
- このコードでは、外部APIから製品情報を取得し、キー
"product_12345"
を使用してMemcachedにキャッシュしています。その後、キャッシュされたデータを取得し、出力しています。
- このコードでは、外部APIから製品情報を取得し、キー
以上の手順で、Memcachedをインストールし、基本的な使用法を実践することができます。
MemcachedとRedisの違いと使い分け
MemcachedとRedisは共に高速なキャッシュシステムですが、それぞれに独自の特徴と使用場面があります。Redisについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
以下の表は、両者の主要な違いをまとめたものです。
特徴 | Memcached | Redis |
---|---|---|
データ型 | 単純なキー-値ストア | 多様なデータ型(リスト、セット、ハッシュなど) |
パーシスタンス | メモリ内データ、再起動で失われる | データ永続化オプションあり |
レプリケーション | 基本的なレプリケーションのみ | 複雑なレプリケーションとシャーディング対応 |
使用場面 | 単純なキャッシュニーズ | 高度なデータ構造と永続化を要するケース |
トランザクション | サポートしていない | トランザクションサポートあり |
クラスタリング | シンプルなクラスタリングのみ | 高度なクラスタリング機能あり |
スクリプト言語 | サポートしていない | Luaスクリプトのサポートあり |
パフォーマンス | 非常に高速 | 高速、しかしMemcachedよりは遅い場合あり |
MemcachedとRedisの使い分け
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Memcachedの使用例
単純なキャッシュシステムが必要で、データの永続化や複雑なデータ構造が不要な場合に適しています。大量の小さいデータ項目を高速にキャッシュするのに最適です。
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Redisの使用例
複雑なデータ構造を使用し、データの永続化や高度な機能(例えば、トランザクション、パブ/サブ機能)が必要な場合に適しています。また、データ構造の操作や計算が求められるアプリケーションにも適しています。
まとめ Memcachedを効果的に活用するために
Memcachedは、データベースやディスクへのアクセスを高速化することで、アプリケーションのパフォーマンスを大幅に向上させることができる分散メモリキャッシングシステムです。
Memcachedを効果的に活用するためには、以下の点に注意が必要です。
- アプリケーションの要件に合わせて、キャッシュのサイズやデータの有効期限などを設定する
- Memcachedのパフォーマンスを監視し、適切なチューニングを行う
Memcachedは、単なるツールであり、その効果は開発者のスキルと知識に大きく依存します。この記事で得た知識を活かして、Memcachedを効果的に活用し、アプリケーションのパフォーマンスを最大限に引き出しましょう。
【番外編】USBも知らなかった私が独学でプログラミングを勉強してGAFAに入社するまでの話
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「フリーランスエンジニア」
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「成功する人とそうでない人の違いは何か?」
私が出した答えは、「量産型エンジニアか否か」である。今のエンジニア市場には、量産型エンジニアが溢れている!!ここでの量産型エンジニアの定義は以下の通りである。
比較的簡単に学習可能なWebフレームワーク(WordPress, Rails)やPython等の知識はあるが、ITの基本概念を理解していないため、単調な作業しかこなすことができないエンジニアのこと。
多くの人がフリーランスエンジニアを目指す時代に中途半端な知識や技術力でこの世界に飛び込むと返って過酷な労働条件で働くことになる。そこで、エンジニアを目指すあなたがどう学習していくべきかを私の経験を交えて書こうと思った。続きはこちらから、、、、
エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。
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