この記事の目的
この記事では、AWS Cognitoの基本概念と機能、そしてそれを利用する具体的な利点を理解することを目指しています。開発者や技術関係者がCognitoの機能を活用して、セキュリティが強化された効率的なユーザー認証システムを構築する方法について具体的な知識を提供します。
AWS Cognitoの概要
AWS CognitoはAmazon Web Servicesが提供する認証・認可・ユーザー管理サービスです。このサービスは、ウェブやモバイルアプリケーションに対して、安全かつスケーラブルなユーザー認証とアクセス制御を提供します。
要するに、AWS Cognitoは、ウェブやモバイルアプリケーションの「玄関」のようなものです。
ユーザーがアプリケーションにアクセスする際には、まずAWS Cognitoの「玄関」を通り抜けなければなりません。AWS Cognitoは、ユーザーの身元を確認して、アプリケーションにアクセスする権限があるかどうかを判断します。
具体的な利用例
例として、スタートアップ企業が新しいウェブアプリケーションを開発している状況を想定します。このアプリケーションでは、ユーザーがアカウントを作成し、ログインしてさまざまなサービスにアクセスする必要があります。開発チームは、セキュリティと使いやすさを重視しながら迅速に認証システムを構築する必要があります。
AWS Cognitoを使用すると、このチームは短期間で安全なユーザー認証システムを実装できます。Cognitoのユーザープールを使用してユーザー登録とサインイン機能を迅速に導入し、FacebookやGoogleなどの外部アイデンティティプロバイダーを通じたログインをサポートできます。さらに、多要素認証(MFA)を簡単に設定してセキュリティを強化することも可能です。
この例では、Cognitoがいかにして開発プロセスを加速し、同時にセキュリティとスケーラビリティを提供するかが示されています。開発チームは認証システムの複雑さに時間を費やすことなく、アプリケーションの他の重要な機能開発に集中できます。
IaCツールTerraformとは何か
CognitoのデプロイをIaCツールであるTerraformで実施していきます。 Terraformは、インフラストラクチャーをコード(IaC)として管理するためのオープンソースツールです。これにより、クラウドリソースのプロビジョニングと管理を自動化し、環境の再現性と追跡性を向上させます。特にAWSリソースの管理において、Terraformは一貫性と効率性を提供し、設定ミスや手作業によるエラーを削減します。
IaCとTerraformについては、こちらの記事で詳しく解説をしています。
https://envader.plus/article/136
Cognitoのハンズオン
AWS Cognitoユーザープールとは
AWS Cognitoユーザープールは、ユーザーのサインアップやサインインなどの認証プロセスを管理するためのフルマネージドサービスです。ユーザープールにより、アプリケーションはユーザー認証情報を直接扱うことなく、安全な認証とユーザー管理機能を提供できます。
以下はTerraformでCognitoをセットアップするハンズオンです。
Terraformのインストールと設定
まず、Terraformをインストールし、AWSの認証情報を設定します。これには、AWS CLIとAWSのアクセスキーとシークレットキーが必要です。Terraformのウェブサイトから自分のOSに応じたインストーラーをダウンロードし、指示に従ってインストールします。
https://developer.hashicorp.com/terraform/install
Terraformコンフィグレーションファイルの作成
次に、Cognitoユーザープールを構築するためのTerraformコンフィグレーションファイル(例:cognito.tf
)を作成します。以下は基本的なCognitoユーザープールを定義するTerraformコードの例です。
provider "aws" {
region = "ap-northeast-1"
}
resource "aws_cognito_user_pool" "my_user_pool" {
name = "my-user-pool"
# Security Hubのセキュリティ基準に従ったパスワード設定
password_policy {
minimum_length = 14
require_lowercase = true
require_numbers = true
require_symbols = true
require_uppercase = true
}
# MFA認証の有効化
mfa_configuration {
required = true
}
}
このコードは、最低限の設定でユーザープールを作成します。パスワードポリシーはカスタマイズ可能です。
Terraformの実行
コンフィグレーションファイルを作成したら、以下のコマンドを実行して、AWSにCognitoユーザープールをデプロイします。
terraform init
terraform plan
terraform apply
terraform init
は、Terraformがプロジェクトを初期化し、必要なプラグインをダウンロードします。terraform plan
は提案される変更を表示し、terraform apply
で実際にリソースを作成します。
確認と管理
terraform apply
の実行後、AWSコンソールから作成されたCognitoユーザープールを確認できます。また、Terraformを使用して、ユーザープールの設定変更や追加リソースの管理が可能です。
Cognitoの高度な機能の活用
AWS Cognitoは、基本的なユーザー認証と管理機能だけでなく、高度なカスタマイズと統合のオプションも提供しています。開発者はアプリケーションのニーズに合わせて柔軟な認証フローを実装できます。
カスタム認証フロー
Cognitoでは、Lambdaトリガーを使用して、認証プロセスの任意の段階でカスタムロジックを実行できます。標準的なユーザー名とパスワードによる認証の代わりに、特定のビジネスロジックやユーザー検証手順を組み込むことが可能です。
例えば、企業向けのアプリケーションでは、ユーザーが特定の役職や部署に所属していることを検証するために、カスタム認証フローを活用できます。また、ソーシャルゲームやオンラインショッピングのアプリケーションでは、ユーザーのデバイス情報や位置情報を基に、不正ログインを検知するためにカスタム認証フローを活用できます。
フェデレーションアイデンティティの統合
Cognitoは、フェデレーションアイデンティティをサポートし、Facebook、Google、Amazonなどのソーシャルアイデンティティプロバイダー(IdP)や、企業向けのSAMLベースのIdPとの統合が可能です。これにより、ユーザーは既存のアカウントを使用してアプリケーションにログインでき、アプリケーションはユーザーのソーシャル情報を利用してパーソナライズされたエクスペリエンスを提供できます。
例えば、FacebookやGoogleなどのソーシャルメディアアカウントでログインできるアプリケーションでは、フェデレーションアイデンティティの統合を活用することで、ユーザーの利便性を向上させることができます。また、企業向けのアプリケーションでは、社内のActive DirectoryやSAMLベースのIdPと統合することで、シングルサインオンを実現できます。
カスタムUIとユーザーエクスペリエンス
Cognitoは、カスタムUIの構築をサポートし、アプリケーションのブランドやデザインに合わせた認証画面を作成できます。また、CognitoはレスポンシブなWeb UIやネイティブモバイルアプリケーション用のUIを提供し、エンドユーザーに最適化されたサインイン体験を提供します。
例えば、高級感のあるブランドイメージを重視するアプリケーションでは、カスタムUIを活用して、洗練されたサインイン体験を実現できます。また、モバイルデバイスで使用されるアプリケーションでは、レスポンシブなUIを活用して、さまざまな画面サイズに対応したサインイン体験を提供できます。
TerraformでのCognitoの管理と運用
Terraformを使用してAWS Cognitoを管理することは、変更管理、バージョニング、そしてセキュリティの面で多くの利点をもたらします。
変更管理
Terraformを使用すると、Cognitoの設定変更がコードとして記述され、追跡しやすくなります。設定変更をより透明かつ制御された方法で行うことが可能です。例えば、新しい認証ポリシーの導入やユーザープールの属性の変更などが、コードレビューと承認プロセスを経て確実に適用されます。
バージョニング
Terraformのコードはバージョン管理システム(例えばGit)で管理されるため、過去の変更を簡単に追跡し、必要に応じて以前のバージョンに戻すことができます。これにより、Cognito設定のバージョン履歴が明確になり、変更点の理解とトラブルシューティングが容易になります。
セキュリティのベストプラクティス
Terraformを利用することで、Cognitoのセキュリティ設定を一元的に管理し、一貫したセキュリティポリシーを適用することが可能です。例えば、多要素認証の強制、パスワードポリシーの設定、アイデンティティプロバイダーのセキュアな統合などが、コードベースで一貫して管理されます。
まとめ
Cognitoの管理と運用をTerraformで効率化
Cognitoは、ユーザー認証と管理を提供するサービスです。Terraformは、インフラストラクチャをコードで管理するためのツールです。Terraformを使用してCognitoを管理することで、変更管理、バージョニング、セキュリティの面での利点を得ることができます。Cognitoの管理と運用を担当するエンジニアは、Terraformの活用を検討することをおすすめします。
参考資料
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/cognito/latest/developerguide/what-is-amazon-cognito.html
https://registry.terraform.io/providers/hashicorp/aws/latest/docs/resources/cognito_user_pool
【番外編】USBも知らなかった私が独学でプログラミングを勉強してGAFAに入社するまでの話
プログラミング塾に半年通えば、一人前になれると思っているあなた。それ、勘違いですよ。「なぜ間違いなの?」「正しい勉強法とは何なの?」ITを学び始める全ての人に知って欲しい。そう思って書きました。是非読んでみてください。
「フリーランスエンジニア」
近年やっと世間に浸透した言葉だ。ひと昔まえ、終身雇用は当たり前で、大企業に就職することは一種のステータスだった。しかし、そんな時代も終わり「優秀な人材は転職する」ことが当たり前の時代となる。フリーランスエンジニアに高価値が付く現在、ネットを見ると「未経験でも年収400万以上」などと書いてある。これに釣られて、多くの人がフリーランスになろうとITの世界に入ってきている。私もその中の1人だ。数年前、USBも知らない状態からITの世界に没入し、そこから約2年間、毎日勉学を行なった。他人の何十倍も努力した。そして、企業研修やIT塾で数多くの受講生の指導経験も得た。そこで私は、伸びるエンジニアとそうでないエンジニアをたくさん見てきた。そして、稼げるエンジニア、稼げないエンジニアを見てきた。
「成功する人とそうでない人の違いは何か?」
私が出した答えは、「量産型エンジニアか否か」である。今のエンジニア市場には、量産型エンジニアが溢れている!!ここでの量産型エンジニアの定義は以下の通りである。
比較的簡単に学習可能なWebフレームワーク(WordPress, Rails)やPython等の知識はあるが、ITの基本概念を理解していないため、単調な作業しかこなすことができないエンジニアのこと。
多くの人がフリーランスエンジニアを目指す時代に中途半端な知識や技術力でこの世界に飛び込むと返って過酷な労働条件で働くことになる。そこで、エンジニアを目指すあなたがどう学習していくべきかを私の経験を交えて書こうと思った。続きはこちらから、、、、
エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。
関連記事
2020.02.25
完全未経験からエンジニアを目指す爆速勉強法
USBも知らなかった私が独学でプログラミングを勉強してGAFAに入社するまでの話
- キャリア・学習法
- エンジニア
2024.08.27
【Terraformハンズオン】NAT GatewayにセカンダリIPアドレスを追加する方法
AWSが提供するNAT Gatewayは、プライベートサブネットにあるサーバーなどのリソースがインターネットに接続するために必要な仕組みです。今回は、このNAT Gatewayに「セカンダリIPアドレス」を追加する方法と、セカンダリIPの基礎を解説します。
- AWS
- Terraform
2024.02.27
AWS ALBとAzure Application Gatewayの違い
この記事では、クラウドコンピューティングの二大巨頭、Amazon Web Services (AWS) の Application Load Balancer (ALB) と Microsoft Azure の Application Gateway (アプリケーションゲートウェイ)の間で、Web アプリケーション向けのロードバランサーサービスを比較します。
- AWS
- Azure
2022.12.26
【AWS】Amazon S3のストレージクラスの使い分けと選択のポイント
S3には様様な使用用途に合わせた6つのストレージクラスが用意されており、それぞれ機能や料金に違いがあるため詳しく説明を行います。
- AWS