はじめに
この記事では、AWS初学者向けにCloudWatch Agentを使ってシステム監視を強化する方法について解説します。CloudWatch Agentを使用することで、AWSリソースやオンプレミスのサーバーの詳細なメトリクスやログを収集し、より精度の高いモニタリングを実現できます。この記事の目的は、CloudWatch Agentの基本的な機能、インストール手順、設定方法について理解し、AWS環境における効果的な監視体制を構築することです。
この記事は以下のような読者を対象としています。
- AWSを使い始めたばかりで、システム監視の重要性を理解したい方
- CloudWatch標準機能に加えて、より詳細なメトリクスを取得したいと考えている方
- サーバーやアプリケーションのログ収集と分析に興味がある方
CloudWatch Agentの基本から設定、トラブルシューティングまでの一連の流れを学ぶことで、AWS環境における運用の安定性を高めることができるでしょう。
CloudWatch Agentとは
AWSのCloudWatch Agentは、AWSリソースやオンプレミスのサーバーの詳細なメトリクスやログを収集するためのエージェントです。例えば、CPU使用率、メモリ使用率、ディスク使用率、アプリケーションログなど、CloudWatch標準のメトリクスでは取得できない情報を収集し、より詳細な監視を実現することができます。
CloudWatch Agentでできること
機能 | 説明 |
---|---|
サーバーメトリクスの監視 | CPU使用率やメモリ使用率、ディスク使用率などの詳細なメトリクスをリアルタイムで監視します。 |
カスタムメトリクスの送信 | 独自に定義したメトリクスをCloudWatchに送信し、システム固有のパラメーターを監視します。 |
ログファイルの収集とモニタリング | エラーログやアクセスログなどを収集し、後で分析することでトラブルシューティングを支援します。 |
サーバーメトリクスの監視
CloudWatch Agentを使うと、CPU使用率やメモリ使用率、ディスク使用率といった詳細なサーバーメトリクスを監視することが可能です。ここで言う「メトリクス」とは、システムやアプリケーションのパフォーマンスや稼働状況を数値で示す指標のことです。これにより、リソースの利用状況を正確に把握し、パフォーマンスの最適化に役立てることができます。
カスタムメトリクスの送信
CloudWatch Agentでは、ユーザーが独自に定義したカスタムメトリクスも収集してCloudWatchに送信することができます。これにより、特定のアプリケーションの動作状況やシステム固有のパラメーターを監視することができます。
ログファイルの収集とモニタリング
アプリケーションやシステムログの収集も可能です。例えば、エラーログやアクセスログをCloudWatchに送信し、後で分析することでトラブルシューティングを行いやすくなります。
CloudWatchとの違い
標準メトリクス vs 詳細メトリクス
CloudWatchにはデフォルトでCPU使用率やネットワークトラフィックなどの標準メトリクスが含まれます。これらは基本的なリソース使用状況を監視するのに十分ですが、メモリ使用率やディスクの使用状況など、より詳細なシステム情報はデフォルトでは提供されていません。
CloudWatch Agentを使うことで、これらの詳細なメトリクスも監視することが可能になり、システム全体のパフォーマンスをより深く理解することができます。例えば、標準メトリクスではCPU使用率の情報は得られてもメモリの使用率は取得できませんが、CloudWatch Agentを導入することでメモリの使用状況も正確に把握することができます。
CloudWatch Agentの導入が必要なケース
サーバーの健康状態をより詳しく把握したい場合や、アプリケーションの動作ログを収集してモニタリングしたい場合にCloudWatch Agentの導入が推奨されます。
CloudWatch Agentのセットアップ方法
必要な前提条件
IAMロールまたはユーザーの準備
CloudWatch Agentを使用するには、データをCloudWatchに送信するためのIAMロールやユーザーが必要です。最低限必要なポリシーを持つロールを作成し、対象のEC2インスタンスにアタッチしましょう。
インスタンスやオンプレミスサーバーの環境確認
CloudWatch AgentはAWSのEC2だけでなくオンプレミスのサーバーにもインストール可能です。事前にエージェントをインストールするサーバーがインターネットに接続できることを確認しておくとよいでしょう。
インストール手順
Linux/Windowsでのインストール方法
LinuxやWindowsでCloudWatch Agentをインストールするには、AWS CLIを使ってパッケージをダウンロードしてインストールすることができます。以下のコマンドを使ってインストールを行います:
Amazon Linux 2023の場合
yum install -y amazon-cloudwatch-agent
Ubuntuの場合
Ubuntuでは公式リポジトリにはCloudWatch Agentが含まれていないため、AWSの公式サイトから直接ダウンロードしてインストールする必要があります。以下のコマンドを使用します。
wget https://s3.amazonaws.com/amazoncloudwatch-agent/ubuntu/amd64/latest/amazon-cloudwatch-agent.deb
sudo dpkg -i amazon-cloudwatch-agent.deb
Windowsの場合
Windowsの場合はPowerShellを使用してインストールを行います。以下のコマンドを実行してください:
msiexec.exe /i https://s3.amazonaws.com/amazoncloudwatch-agent/windows/amd64/latest/amazon-cloudwatch-agent.msi /qn
設定ファイル生成のためのcloudwatch-agent-config-wizard
の使用
CloudWatch Agentには設定ファイルが必要です。この設定ファイルは手動で編集することも可能ですが、cloudwatch-agent-config-wizard
コマンドを使うと簡単に生成できます。これにより、どのメトリクスを収集するか、どのログを送信するかを対話形式で設定できます。
設定ファイルのカスタマイズ
デフォルト設定の確認
設定ファイルにはデフォルトで基本的なメトリクス収集の設定が含まれています。まずはこれを確認し、自分の環境に合った設定に変更していくことが大切です。
カスタムメトリクスの追加方法
デフォルトの設定では収集されないメトリクスも、設定ファイルを編集することで追加できます。例えば、アプリケーションのパフォーマンスに関連する独自のメトリクスを追加して監視することができます。
ログ収集設定の例
アプリケーションログやシステムログを収集したい場合は、設定ファイルにログファイルのパスを指定します。また、各パラメータの意味も理解しておくと役立ちます。
file_path
: 収集するログファイルのパスを指定します。log_group_name
: CloudWatch Logsでログをグループ化するための名前を設定します。log_stream_name
: ロググループ内でログをさらに細かく分けるための名前を設定します。
例えば、以下のような設定を行います。
{
"logs": {
"logs_collected": {
"files": {
"collect_list": [
{
"file_path": "/var/log/messages",
"log_group_name": "my-log-group",
"log_stream_name": "my-log-stream"
}
]
}
}
}
}
CloudWatch Agentを使用したモニタリングの例
メトリクスの可視化
ダッシュボード作成
CloudWatchコンソールでは、収集したメトリクスを基にダッシュボードを作成して可視化できます。これにより、システムのパフォーマンスをリアルタイムで監視することが可能です。
アラーム設定の基本
重要なメトリクスに対してアラームを設定することで、しきい値を超えた際に通知を受け取ることができます。例えば、CPU使用率が一定値を超えた場合にSNSを通じて通知を送信する設定ができます。
ログの活用
エラー検出の方法
CloudWatch Logsに送信されたログを分析することで、エラーや異常の早期検出が可能になります。CloudWatch Insightsを使って特定のエラーメッセージを検索することも有効です。
ロググループとストリームの管理
CloudWatchでは、ログは「ロググループ」と「ログストリーム」として整理されます。各アプリケーションやシステムに合わせてこれらを管理し、効率的なログモニタリングを行いましょう。
トラブルシューティング
よくあるエラーとその対処法
Agentが動作しない場合
CloudWatch Agentが正常に動作しない場合、IAMロールの権限が不足していることが原因のことがあります。IAMポリシーを確認し、適切な権限が付与されていることを確認しましょう。
メトリクスやログが送信されない場合
メトリクスやログがCloudWatchに送信されない場合、設定ファイルの内容を見直し、CloudWatch Agentが正しく起動しているかを確認します。また、ログの出力先が誤っていないか、ネットワーク接続が問題ないかもチェックポイントです。
ログの確認方法
/var/logs/amazon-cloudwatch-agent/
の活用
CloudWatch Agentの問題を確認する際には、/var/log/amazon-cloudwatch-agent/
に出力されるログを確認します。このログには、エージェントの起動時や動作中のエラーが記録されています。
実戦の現場でのCloudWatch Agentの活用例
CloudWatch Agentは実際の運用現場で、さまざまな用途で利用されています。以下にその具体的な例を挙げてみましょう。
EC2インスタンスのパフォーマンス監視
多くの企業で使用されているEC2インスタンスのパフォーマンス監視にCloudWatch Agentは欠かせません。例えば、EC2インスタンスが高負荷状態にある場合に、CPUやメモリ使用率のメトリクスをリアルタイムで取得することで、リソースのスケーリングや最適化を迅速に行うことが可能です。
アプリケーションのヘルスチェック
Webアプリケーションの稼働状況をモニタリングするためにもCloudWatch Agentが使われます。特に、ログ収集機能を活用してアプリケーションのエラーログやアクセスログを分析することで、異常の早期検知や問題の原因特定が容易になります。これにより、ユーザー体験を損なう前に迅速な対応が可能です。
ハイブリッド環境の統合監視
オンプレミスサーバーとAWSクラウドの両方を利用するハイブリッド環境においても、CloudWatch Agentは重要な役割を果たします。オンプレミスサーバーのメトリクスやログをAWSに集約することで、クラウドとオンプレミスの統合監視が実現し、運用の一元化と効率化が図れます。
まとめ
CloudWatch Agentの利点の振り返り
CloudWatch Agentは、標準のCloudWatchメトリクスでは得られない詳細な情報を提供し、AWS環境のモニタリングを強化するための重要なツールです。特に、カスタムメトリクスやログ収集機能は、システム全体の監視を行う上で非常に役立ちます。
AWS学習における次のステップ
CloudWatch Agentの基本を理解した後は、他のAWSの監視ツールやサービス(例えばAWS Config)を学習して、より包括的な運用体制を構築していきましょう。また、CloudWatch Agentの高度な設定や他のクラウドプロバイダとの連携についても学んでみると良いでしょう。
参考リンク
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エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。
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