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2024.02.27

AWS ALBとAzure Application Gatewayの違い

アプリケーションロードバランサーの概要

この記事では、クラウドコンピューティングの二大巨頭、Amazon Web Services (AWS) の Application Load Balancer (ALB) と Microsoft Azure の Application Gateway (アプリケーションゲートウェイ)の間で、Web アプリケーション向けのロードバランサーサービスを比較します。これらのサービスは、インターネットトラフィックの増加に伴い、Web アプリケーションのパフォーマンスと可用性を向上させるために不可欠です。

アプリケーションレイヤー(L7)のロードバランシングサービス

特に、これらのサービスはL7レイヤー、つまりOSIモデルのアプリケーションレイヤーに焦点を当てています。L7レイヤーは、ユーザーのリクエストをアプリケーションが理解できる形式で処理するレイヤーです。これにより、ALBとApplication Gatewayは、単にトラフィックを分散するだけでなく、より洗練されたルーティングルール(例えば、URLパスに基づくルーティング、ホスト名、またはリクエストの内容)を適用することができます。

OSI参照モデルについてはこちらの記事をご覧ください。

https://envader.plus/article/38

両サービスとも、セキュリティ強化、SSL終端、ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)統合など、高度な機能を提供していますが、機能の範囲、設定方法、コスト構造には違いがあります。

ALBとアプリケーションゲートウェイの機能比較

機能AWS ALBAzure Application Gateway
リスナー
ルーティングルール
バックエンドサービス
認証
WAF統合
特殊機能コンテナルーティング、ヘッダー書き換えURLパスルーティング、セッションアフィニティ

ALBとアプリケーションゲートウェイの機能の違い

  • リスナー

    両サービスともに、リスナーを通してポートとプロトコルでトラフィックを監視します。Azure Application Gatewayは、ホストヘッダーを含むより詳細なリスナー設定を提供します。

  • ルーティングルール

    ALBでは、パス、ホストヘッダー、ターゲットグループに基づくルーティングが可能です。一方、Application Gatewayでは、パスとホストヘッダーを使用してバックエンドプールにルーティングする機能を提供します。

  • バックエンドサービス

    ALBはEC2インスタンス、コンテナ、Lambda関数など多様なバックエンドサービスをサポートしています。Application Gatewayは、仮想アプライアンスやWebサーバー、Azure FunctionsなどAzure内のリソースへのルーティングをサポートします。

  • 認証

    ALBはAWS CognitoやIAMを用いた認証が可能です。Application GatewayはAzure Active Directory (AD) およびRole-Based Access Control (RBAC) を使用した認証をサポートします。

  • WAF統合

    両サービスともに、WAF(Web Application Firewall)との統合が可能です。ALBはAWS WAFと、Application GatewayはAzure Firewallと統合できます。

  • 特殊機能

    ALBはコンテナへのルーティングやホスティングヘッダーの書き換えなどの特殊機能を提供します。Application GatewayはURLパスベースのルーティングやセッションアフィニティ(スティッキーセッション)などの機能を提供します。

設定方法の比較

AWS ALBはその使いやすさとシンプルな設定プロセスで知られている一方で、Azure Application Gatewayはより高度な設定が可能であるものの、それに伴い設定の複雑さが増します。とはいえ、慣れで解消する程度の微妙な差です。

項目ALBApplication Gateway
方法AWS マネジメントコンソール、AWS CLI、APIAzure ポータル、Azure CLI、API
複雑さ比較的簡単比較的複雑

設定方法について

設定に使用するインターフェースはいずれも同じ種類ですが、使用感は異なります。

  • AWS ALB

    ALBの設定は、AWSマネジメントコンソール、AWS Command Line Interface (CLI)、またはAWSの提供するAPIを通じて行うことができます。これらの方法は、ユーザーがインターフェースを選択しやすいように設計されており、直感的で使いやすいものとなっています。ALBの設定プロセスは、ガイド付きのステップを提供し、複雑な設定を単純化します。

  • Azure Application Gateway

    Application Gatewayの設定には、Azureポータル、Azure CLI、APIのいずれかを使用します。これらの方法は、高度な設定オプションと柔軟性を提供する一方で、ALBに比べて設定プロセスが複雑になる傾向があります。特に、詳細なルーティング規則やWAF設定など、高度な機能を活用する場合、より多くの設定ステップを要することがあります。

費用に関する注意点

料金的には、どちらも従量課金制となっており差異は見られませんが、いくつかの注意点を挙げます。

項目ALBApplication Gateway
料金体系従量課金制従量課金制
費用使用したリソースに対して課金使用したリソースに対して課金
  • 予測可能性

    従量課金制では、使用量に応じて費用が変動します。トラフィック量が予測しやすい環境では問題ありませんが、急激なトラフィックの増加が見込まれる場合は、コストが急増する可能性があります。事前にトラフィックの見積もりを行い、コスト管理に役立ててください。

  • 機能と費用のバランス

    ALBとApplication Gatewayは様々な機能を提供しますが、特定の機能を使用すると追加費用が発生することがあります。例えば、WAF統合や詳細なルーティングルールなどの高度な機能を利用する場合、これらのサービスに対する費用も考慮する必要があります。

  • 料金体系の理解

    両サービスの料金体系は複雑で、インスタンスのサイズや時間単位の利用、データ転送量によって費用が変動します。利用する前に、それぞれの料金体系を詳細に理解し、想定される使用パターンに基づいてコストを見積もることが重要です。

  • コスト最適化

    不要なリソースは適宜削減し、コスト効率の良い設定を心がけてください。例えば、ピーク時だけリソースを増やし、閑散期にはスケールダウンするなど、柔軟なリソース管理を行うことで、無駄なコストを削減できます。

選択するロードバランサーサービスは、あなたのプロジェクトやアプリケーションの具体的な要件に大きく依存します。AWSのApplication Load Balancer(ALB)とAzureのApplication Gatewayはどちらも強力な機能を提供しますが、それぞれ特定のシナリオで最適な選択となる特徴があります。以下では、各サービスが特に適している状況について解説します。

どちらを選ぶべきか

クラウドサービスプロバイダーを選んだ時点で、どちらを使うかは決まりますが、ここでは仮にサービスベースでどちらを選択するかを考えてみます。

AWS ALBを選ぶべき時

  • シンプルな設定を好む場合

    ALBは設定が直感的で、迅速なデプロイメントを可能にします。GUIが使いやすく、CLIやAPIを通じた自動化も容易です。特に、AWSのエコシステム内で完結したソリューションを求めている場合に適しています。

  • コンテナベースのアプリケーションを運用する場合

    ALBはECS(Elastic Container Service)やEKS(Elastic Kubernetes Service)との統合が優れており、コンテナ化されたアプリケーションのロードバランシングに最適です。

  • AWS WAFとの統合が必要な場合

    セキュリティが重要なアプリケーションで、AWS WAFを利用してウェブアプリケーションのセキュリティを強化したい場合には、ALBが適しています。WAFとの統合により、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などの脅威から保護できます。

Azure Application Gatewayを選ぶべき時

  • 詳細なルーティング設定が必要な場合

    Application Gatewayは、URLベースのルーティング、マルチサイトリスニングなど、より詳細なルーティング設定を提供します。複雑なアプリケーションアーキテクチャを持つプロジェクトに適しています。

  • セッションアフィニティを利用したい場合

    ユーザーセッションを特定のサーバーに固定する必要があるアプリケーションには、Application Gatewayのセッションアフィニティ機能が適しています。これにより、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。

  • Azure Firewallとの統合が必要な場合

    Azure上でセキュリティを一元管理したい場合、Application GatewayとAzure Firewallの統合は、強力なセキュリティ対策を実現します。特に、Azureのリソースを広範に使用している場合におすすめです。

基本的な機能的には殆ど違いがないため、どちらを選んだとしてもさほどの問題はありませんが、最終的には、特定の要件や環境に最適なサービスを選択することが重要です。

まとめ

AWSのApplication Load Balancer(ALB)とMicrosoft AzureのApplication Gatewayは、Webアプリケーションのパフォーマンスと可用性を高めるための強力なロードバランサーサービスです。それぞれが提供する独自の機能セット、設定の柔軟性、および統合可能なセキュリティ機能には、特定のユースケースやアーキテクチャ要件に最適な選択肢があります。この記事では、ALBとApplication Gatewayの主要な機能、設定方法、費用比較、および選択基準について解説しました。

ほとんどの場合、クラウドサービスプロバイダー(CSP)を選択した時点でどちらを使うかは決まるので、それぞれの特徴を把握し、適切に設定できるようにしましょう。

エンベーダー編集部

エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。

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