
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、ハードウェア制約を踏まえた組込みシステムの設計・開発を、実務レベルで判断できるかを問うIT系国家資格です。リアルタイム性や信頼性が求められる分野において、要件定義から設計、実装、評価までを一貫して捉える視点が求められます。組込みエンジニアとして現場経験を積み、より上流工程や設計判断に関わりたい方にとって、専門性を示す指標となる資格です。
本記事では、エンベデッドシステムスペシャリスト試験の概要や難易度、勉強方法を整理しながら、どのようなキャリア段階で意味を持つ資格なのかを解説します。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験とは

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、組込みシステム分野における専門知識と設計力を評価する高度情報処理技術者試験です。高度情報処理技術者試験の中でも、組込みシステムを専門領域として扱う位置づけにあります。
本試験では、単なる技術知識だけでなく、制約条件を踏まえた設計判断や、システム全体を俯瞰する視点が問われます。組込みシステムに関わる業務で、設計・開発・評価を担う技術者を想定した試験です。
エンベデッドシステムとは

エンベデッドシステムとは、特定の機能を実行するために製品へ組み込まれたコンピュータシステムを指します。一般に「組み込みシステム」とも呼ばれます。
家電製品や自動車、産業機器など、身近な製品の多くに組み込まれており、用途ごとに最適化された構成が特徴です。汎用的なコンピュータとは異なり、リアルタイム性・信頼性・省リソース性が重視されます。
そのため、設計段階からハードウェアや制約条件を考慮した、専門性の高い開発が求められます。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の内容

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、高度情報処理技術者試験の中でもレベル4に分類される試験です。組込みシステムに関する設計・開発・評価を横断的に理解しているかが評価されます。
試験では、以下の観点に関する知識と判断力が問われます。
- 機能要件の把握
- システム設計・開発
- ソフトウェア設計・製造
- ハードウェア設計・製造
- システム評価
- 保守
近年では、IoT機器や自動運転、ドローンといった分野を背景とした出題も見られ、実務に即した設計力・判断力が求められます。
試験は午前・午後の2部制で、構成は以下のとおりです。
| 時間帯 | 試験時間 | 出題形式 | 出題数と解答数 |
|---|---|---|---|
| 午前Ⅰ | 9:30~10:20(50分) | 多肢選択式(四肢択一) | 出題数:30問 / 解答数:30問 |
| 午前Ⅱ | 10:50~11:30(40分) | 多肢選択式(四肢択一) | 出題数:25問 / 解答数:25問 |
| 午後Ⅰ | 12:30~14:00(90分) | 記述式 | 出題数:3問 / 解答数:2問 |
| 午後Ⅱ | 14:30~16:30(120分) | 論述式 | 出題数:2問 / 解答数:1問 |
出典:IPA公式 - エンベデッドシステムスペシャリスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の難易度

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、知識量そのものよりも、制約条件を踏まえた設計判断と、その理由を説明する力が求められる点で、難易度が高いと感じられやすい試験です。
午後試験では、リアルタイム性や信頼性、ハードウェア制約といった前提を読み取り、複数の選択肢の中から妥当な設計方針を選ぶ思考力が問われます。正解を答えるだけでなく、「なぜその判断になるのか」を文章で整理する必要があります。
また、午前・午後の各区分で基準点を満たす必要があり、ソフトウェアまたはハードウェアのどちらかに偏った理解では合格しにくい点も特徴です。組込みシステム全体を俯瞰して捉える視点が求められます。
こうした試験構成から、暗記中心の学習では対応しにくく、制約条件を前提にした設計の考え方を、段階的に整理していくことが重要な試験といえるでしょう。
IPAの統計資料によると、直近の合格率はおおむね15〜20%前後で推移しています。
| 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
|---|---|---|---|
| 平成30年度春期 | 3,461人 | 616人 | 17.8% |
| 平成31年度春期 | 3,653人 | 585人 | 16.0% |
| 令和2年度10月 | 1,962人 | 321人 | 16.4% |
| 令和3年度秋期 | 2,185人 | 400人 | 18.3% |
| 令和4年度秋期 | 2,415人 | 476人 | 19.7% |
| 令和5年度秋期 | 1,841人 | 305人 | 16.6% |
| 令和6年度秋期 | 1,365人 | 231人 | 16.9% |
| 令和7年度秋期 | 1,696人 | 177人 | 15.3% |
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の勉強法

エンベデッドシステムスペシャリスト試験では、知識の暗記だけでなく、設計判断の考え方を整理する学習が必要になります。そのため、段階を分けて理解を積み上げる勉強法が効果的です。
目安となる勉強時間は200〜300時間程度で、組込み分野の実務経験があるかどうかで前後します。
学習ステップの全体像:
- 基本知識の整理
- 設計・判断力の強化
- 過去問による定着
Step1:基本知識の整理(目安:60〜80時間)

まずは、組込みシステムに関する前提知識を整理します。ここでは深掘りよりも、用語や概念を一通り説明できる状態を目指します。
- 組込みシステムの基本構造
- ハードウェアとソフトウェアの役割分担
- システム設計の基礎概念
参考書を使いながら、全体像を把握することを優先しましょう。
Step2:設計・判断力の強化(目安:60〜100時間)

次に、制約条件を踏まえた設計判断に慣れていきます。午後試験を見据え、「なぜその設計になるのか」を説明できる力を意識します。
- リアルタイム性・信頼性を考慮した設計
- ソフトウェアとハードウェアの役割分担
- トレードオフを踏まえた判断
実務経験がある場合は、日々の業務と結びつけて考えると理解が深まります。
Step3:過去問による定着(目安:80〜120時間)

最後に、過去問題を使って知識と考え方を定着させます。過去問は知識確認ではなく、思考プロセスの確認として活用するのがポイントです。
- 問題文から前提条件を整理
- 設計方針を言語化
- 模範解答との考え方の差を確認
時間を計って解くことで、本番を意識した練習にもなります。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の過去問題

エンベデッドシステムスペシャリスト試験の過去問題は、IPAの公式サイトで公開されています。会員登録や費用は不要で、誰でも利用できます。
過去問題は、単なる知識確認ではなく、学習内容をアウトプットする機会として活用することが重要です。記憶は「覚える力」よりも思い出す力(想起)によって定着しやすく、問題を解く過程そのものが理解を深める効果を持ちます。
まずは直近数年分を解きながら、出題の視点や設計の考え方を整理し、自分の言葉で判断理由を説明できるかを意識すると、学習効率が高まります。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の価値とキャリア

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、組込みシステム分野において、設計判断や技術的な意思決定を担える立場に近づくための資格です。単に知識量を示すものではなく、制約条件を踏まえた設計力や、全体を見渡す視点を備えていることを客観的に示せます。
この資格を取得することで、次のような価値が期待できます。
- 組込みシステムにおける設計・判断力の可視化
- 上流工程や設計レビューへの関与
- 専門領域を持つエンジニアとしての信頼性向上
自動車、家電、産業機器、IoT分野など、組込みシステムは幅広い分野で活用されており、特定技術に依存しない専門性として評価されやすい点も特徴です。
また、合格後は実装中心の役割に限らず、設計や全体調整を担う立場へとキャリアを広げやすくなります。
- システムエンジニア(設計・上流工程)
- IoT関連エンジニア
- システムアーキテクト
- 技術選定や設計支援を行う立場
技術力に加えて、判断力や説明力が求められる試験であるため、チーム内での役割拡張や、将来的なマネジメント・専門職への移行を見据えるうえでも意味を持つ資格です。
これからの選択肢を広げるために

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、組込みシステムに関わるエンジニアが、次の役割へ進むための土台となる資格です。
設計や判断に関わる力を整理し、言語化する経験は、日々の業務や将来のキャリア選択にも活かせます。今の立場から一歩先を見据えたいと感じたとき、検討する価値のある選択肢のひとつといえるでしょう。
IPAの高度資格9種について
IPAの高度資格は9種類あります。それぞれの特徴やキャリア別に整理した以下の記事も参考にしてみてください。「今の立場」と「次に目指したい役割」から、自分に合う資格が見えてきます。
▼何がおすすめ?IPA 高度な知識・技能資格概要
https://envader.plus/article/200
参考資料
-
IPA公式 - エンベデッドシステムスペシャリスト試験
【番外編】USBも知らなかった私が独学でプログラミングを勉強してGAFAに入社するまでの話

プログラミング塾に半年通えば、一人前になれると思っているあなた。それ、勘違いですよ。「なぜ間違いなの?」「正しい勉強法とは何なの?」ITを学び始める全ての人に知って欲しい。そう思って書きました。是非読んでみてください。
「フリーランスエンジニア」
近年やっと世間に浸透した言葉だ。ひと昔まえ、終身雇用は当たり前で、大企業に就職することは一種のステータスだった。しかし、そんな時代も終わり「優秀な人材は転職する」ことが当たり前の時代となる。フリーランスエンジニアに高価値が付く現在、ネットを見ると「未経験でも年収400万以上」などと書いてある。これに釣られて、多くの人がフリーランスになろうとITの世界に入ってきている。私もその中の1人だ。数年前、USBも知らない状態からITの世界に没入し、そこから約2年間、毎日勉学を行なった。他人の何十倍も努力した。そして、企業研修やIT塾で数多くの受講生の指導経験も得た。そこで私は、伸びるエンジニアとそうでないエンジニアをたくさん見てきた。そして、稼げるエンジニア、稼げないエンジニアを見てきた。
「成功する人とそうでない人の違いは何か?」
私が出した答えは、「量産型エンジニアか否か」である。今のエンジニア市場には、量産型エンジニアが溢れている!!ここでの量産型エンジニアの定義は以下の通りである。
比較的簡単に学習可能なWebフレームワーク(WordPress, Rails)やPython等の知識はあるが、ITの基本概念を理解していないため、単調な作業しかこなすことができないエンジニアのこと。
多くの人がフリーランスエンジニアを目指す時代に中途半端な知識や技術力でこの世界に飛び込むと返って過酷な労働条件で働くことになる。そこで、エンジニアを目指すあなたがどう学習していくべきかを私の経験を交えて書こうと思った。続きはこちらから、、、、
エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。

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