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2024.09.28

Trivyで実現するTerraformのセキュリティ強化 IaC脆弱性スキャンの方法

はじめに

コンテナ化やクラウドの普及により、Infrastructure as Code(IaC)を使ったインフラ管理が一般的になりました。これにより、インフラのコード化による効率化が進みましたが、一方でコードに潜むセキュリティリスクも拡大しています。これらのリスクを管理するためには、適切なセキュリティスキャンを導入し、脆弱性を早期に発見することが重要です。

IaC(Infrastructure as Code)とは?

Infrastructure as Code(IaC)とは、コードを使用してインフラを自動化・管理する手法のことです。たとえば、TerraformやCloudFormationなどのツールを使うと、仮想マシン、ネットワーク、ストレージなどのリソースをコードとして定義し、デプロイや変更を効率的に行うことができます。コード化されたインフラは再現性が高く、管理が容易であるため、DevOpsの実践においても重要な要素となっています。

IaCにおけるセキュリティの重要性

IaCの利便性に反して、コードの設定ミスやセキュリティの不備が原因で、重大なセキュリティリスクが生じることがあります。たとえば、セキュリティグループが過度に緩和されている場合や、機密情報がコードに直接含まれている場合、攻撃者にとって格好のターゲットとなる可能性があります。そのため、IaCファイルに対してもセキュリティスキャンを行い、リスクを事前に検出し、修正することが不可欠です。

Trivyの役割

Trivyは、IaCファイルに含まれる脆弱性や設定ミスを検出するための強力なツールです。Terraform、CloudFormation、Kubernetes、Helmなど、さまざまなIaCツールに対応しており、特定のセキュリティポリシーに基づいてスキャンを実行します。Trivyは、軽量でありながら強力な脆弱性スキャナとして、セキュリティの自動化を支援します。
詳しくはTrivyを使ったセキュリティスキャンの基本と導入方法をご覧ください。

IaCに潜むセキュリティリスク

Infrastructure as Code(IaC)の導入により、インフラの管理と展開が効率化されましたが、コードベースのインフラには特有のセキュリティリスクも存在します。設定ミスや不適切な構成が、インフラ全体に深刻な脆弱性をもたらす可能性があります。以下では、具体的なリスク例を紹介します。

Terraformの設定ミス

Terraformはマルチクラウドに対応した人気のIaCツールですが、セキュリティ設定の誤りが深刻なリスクを生むことがあります。たとえば、セキュリティグループの設定が誤って外部からのアクセスを広く許可してしまうケースがあります。特に、SSHポート(22番)が無制限に開放されるような設定は、攻撃者に対して大きな侵入経路を提供する結果となります。

設定ミスの例

WARN: Security group allows unrestricted access to SSH (port 22)

この警告は、SSHへのアクセスが無制限に許可されていることを示しており、早急に修正する必要があります。

認証情報の漏洩

IaCのコード内に、APIキーやパスワードといった認証情報がハードコードされているケースもセキュリティ上の大きなリスクです。これらの機密情報がバージョン管理システムにアップロードされると、リポジトリを通じて漏洩する可能性があります。攻撃者はこれらの情報を利用して、システムへの不正アクセスを試みるかもしれません。

認証情報漏洩のリスク

WARN: Hardcoded API key found in configuration file

このようなエラーは、機密情報をシークレット管理ツール(例:HashiCorp Vault)に移行し、コードから削除する必要があることを示します。

デフォルト設定の利用

多くのIaCツールにはデフォルト設定が含まれていますが、それがセキュリティの観点から十分に堅牢であるとは限りません。たとえば、AWSやAzureで作成される新しいリソースは、デフォルトでパブリックアクセスが許可されている場合があります。これにより、インターネット全体に対して不要なアクセス権限が設定されることがあります。

デフォルト設定の例

INFO: Resource is using default security group settings

このメッセージは、デフォルトのセキュリティグループ設定が使用されていることを示し、必要に応じてカスタマイズすることでリスクを軽減できます。

IaCのセキュリティリスクを最小限に抑えるためには、これらの設定ミスや脆弱性を早期に検出し、修正することが重要です。

Trivyを使ったTerraformファイルのセキュリティスキャン

Terraformによって管理されるインフラストラクチャは、誤った設定や脆弱な構成によって重大なセキュリティリスクを引き起こすことがあります。そこで、Trivyを使ってTerraformファイルのセキュリティスキャンを行い、これらのリスクを事前に検出・修正することが非常に重要です。Trivyは、Terraformファイルを含むさまざまなIaC(Infrastructure as Code)ツールに対応した軽量かつ強力な脆弱性スキャナです。

TrivyのインストールとTerraformファイルのスキャン

Trivyを使用してTerraformファイルをスキャンするには、以下のようにTrivyをインストールし、スキャン対象のファイルパスを指定します。

インストールコマンド

まず、Trivyをインストールします。以下は、UbuntuやMacなどの一般的なシステムで使えるインストールコマンドの例です。

brew install trivy

あるいは、バイナリの直接ダウンロードやDockerを利用したインストールも可能です。

Terraformファイルのスキャン

Terraformファイルをスキャンする際には、以下のコマンドを使用します。

trivy config --config-policy terraform ./path/to/terraform-files

このコマンドにより、Terraformファイル内の設定ミスや脆弱な設定が自動的に検出されます。Trivyは、特定のセキュリティポリシーに基づいて、セキュリティグループの設定、IAMロールの過剰な権限、ハードコードされた認証情報などのリスクを警告します。

スキャン結果の例と解釈

以下は、Trivyを使ったTerraformファイルスキャンの結果例です。

WARN: Security group allows unrestricted access to SSH (port 22)

このエラーメッセージは、SSHポートが無制限に開放されていることを示しています。このような設定は、攻撃者がシステムに容易に侵入できるリスクを高めるため、速やかに修正する必要があります。適切な対策としては、アクセス制御リスト(ACL)を導入し、特定のIPアドレスのみがアクセス可能になるようにセキュリティ設定を見直すことが推奨されます。

Trivyを使うことで、このようなセキュリティリスクを素早く検出し、インフラのセキュリティを強化することができます。

他のIaCツールでのセキュリティスキャン

TrivyはTerraformだけでなく、他のIaC(Infrastructure as Code)ツールにも対応しており、さまざまなインフラ管理ツールでの脆弱性スキャンを行うことができます。ここでは、CloudFormation、Kubernetes、Ansibleに対するセキュリティスキャンの具体例を紹介します。

CloudFormationのセキュリティスキャン

AWSのIaCツールであるCloudFormationは、インフラをコード化する際によく使用されるツールですが、設定ミスや過剰な権限を持つリソースがセキュリティリスクを引き起こすことがあります。Trivyを使うことで、CloudFormationテンプレート内の設定ミスを検出できます。

trivy config --config-policy cloudformation ./path/to/cloudformation-template

スキャン結果の例

WARN: IAM role grants excessive permissions: "s3:*"

このエラーメッセージは、IAMロールがすべてのS3操作を許可していることを示しており、これによりセキュリティリスクが発生する可能性があります。IAMロールに対して最小権限を適用し、必要最低限の操作権限のみを付与することが推奨されます。

KubernetesマニフェストとHelmチャートのスキャン

Kubernetesは、コンテナ化されたアプリケーションの管理に使われる強力なツールですが、セキュリティ設定の不備がクラスタ全体に脅威を及ぼす可能性があります。Trivyを使って、KubernetesマニフェストやHelmチャートに潜むセキュリティリスクをスキャンできます。

trivy config --config-policy kubernetes ./path/to/kubernetes-manifest

スキャン結果の例:

WARN: Pod is running with privileged access

このメッセージは、Podが特権モードで実行されていることを示しており、これはKubernetesのベストプラクティスに反する設定です。Podの特権モードを無効にし、必要最低限の権限で実行するように設定を変更することが推奨されます。

Ansibleのセキュリティチェック

Ansibleは、構成管理ツールとして広く使用されていますが、Playbook内での設定ミスやセキュリティリスクも発生することがあります。Trivyを使うことで、Ansible Playbookのスキャンを実行し、問題のある設定を特定できます。

trivy config --config-policy ansible ./path/to/ansible-playbooks

スキャン結果の例

WARN: Task includes hardcoded credentials: "db_password"

このエラーメッセージは、Ansible Playbook内でハードコードされたパスワードが検出されたことを示しています。セキュリティリスクを軽減するために、シークレット管理ツール(例:VaultやAWS Secrets Manager)を使用して機密情報を安全に管理することが推奨されます。

IaCセキュリティスキャンのベストプラクティス

Trivyを使用してIaCのセキュリティスキャンを行う際に、効果的な運用を実現するためのベストプラクティスを紹介します。これらのポイントに従うことで、IaCファイルに潜むリスクをより確実に検出し、セキュアなインフラ運用を実現できます。

1. 最小権限の原則に基づく設定

インフラのリソースやユーザーに対して、最小限の権限だけを付与することが重要です。例えば、AWSやGoogle CloudのIAMポリシーで、すべてのリソースにアクセスできる広範な権限を持たせるのではなく、特定のリソースにのみ必要な権限を割り当てることで、セキュリティリスクを最小化できます。

2. シークレットの適切な管理

シークレット情報(APIキー、パスワード、トークンなど)をコードに直接書き込むのは避け、VaultやAWS Secrets Manager、Azure Key Vaultなどの専用ツールを利用して機密情報を安全に管理します。Trivyはコードにハードコードされたシークレットを検出するため、シークレット管理の実装が不完全な場合には警告を出します。

3. デフォルト設定の見直し

IaCツールが提供するデフォルトのセキュリティ設定を信頼しすぎないことが重要です。たとえば、デフォルトで許可されているポートやリソースのパブリックアクセスを制限することが、セキュリティリスクを大幅に減らすことに繋がります。Trivyはデフォルト設定に依存している部分を検出し、見直しを促す機能を提供します。

4. 定期的なスキャンの実施

IaCファイルは、インフラが頻繁に変更されるため、定期的にセキュリティスキャンを実行し、コードが最新のセキュリティ要件に準拠しているかを確認することが推奨されます。Trivyは迅速かつ効率的なスキャンを行うため、定期的にIaCファイルの検査を自動化することも容易です。

5. スキャン結果の継続的なモニタリングと改善

セキュリティスキャンの結果を継続的にモニタリングし、リスクが検出された場合は迅速に修正します。Trivyのスキャン結果を利用して、特定の脆弱性に対するアクションを自動化し、セキュリティの改善を計画的に進めることが重要です。

まとめ

IaCを使ったインフラ管理は便利ですが、適切なセキュリティチェックを行わないと、セキュリティリスクが発生する可能性があります。Trivyを使えば、Terraform、CloudFormation、Kubernetes、AnsibleといったさまざまなIaCツールに対するセキュリティスキャンを簡単に実施でき、脆弱性や設定ミスを事前に検出して対処することが可能です。

Trivyを使用することで、設定ミスや脆弱な構成を早期に特定し、IaCコードをセキュアに保つことができます。手動のチェックに頼らず、自動化されたツールを使ってセキュリティリスクを管理することで、より効率的で安全なインフラ運用が可能になります。ぜひTrivyを活用してIaCのセキュリティ対策を強化してください。

参考リンク

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多くの人がフリーランスエンジニアを目指す時代に中途半端な知識や技術力でこの世界に飛び込むと返って過酷な労働条件で働くことになる。そこで、エンジニアを目指すあなたがどう学習していくべきかを私の経験を交えて書こうと思った。続きはこちらから、、、、

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エンベーダー編集部

エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。

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