はじめに
AWSのコンテナオーケストレーションサービスであるAmazon ECS(Elastic Container Service)は、アプリケーションをコンテナ化して管理するための強力なツールです。ECSは、主にアプリケーションのスケーラビリティと管理の効率化を目的として使用されます。ECSには、インフラを自分で管理するEC2モードと、サーバーレスで運用できるFargateモードがあります。どちらを選べば良いか迷うことも多いため、この記事ではECS on EC2とFargateの違いについて詳しく解説し、それぞれのメリットとデメリットを比較します。
ECSの基本についてはこちらの記事をご参照ください。
https://envader.plus/article/180
ECS on EC2とは?
概要と仕組み
ECS on EC2は、ユーザーがEC2インスタンスを利用してコンテナを実行するモードです。EC2インスタンスはAWSの仮想サーバーであり、ユーザーは必要なリソースをプロビジョニングし、インスタンスを管理する責任があります。例えば、自分のアプリケーションの特定のニーズに合わせて、CPUやメモリの設定を自由に調整できます。
メリットとデメリット
メリット
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高いカスタマイズ性 EC2インスタンスのタイプや数を自由に選べるため、システムの特定のニーズに応じた最適な設定が可能です。例えば、データベースサーバーには高メモリのインスタンス、ウェブサーバーには高CPUのインスタンスを選ぶことができます。
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コスト効率 長期間にわたって安定した利用が見込まれる場合、リザーブドインスタンスなどを利用することでコストを抑えられます。リザーブドインスタンスを使用することで、オンデマンド料金よりも最大で75%の割引が受けられます。
デメリット
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インフラ管理が必要 インスタンスのスケーリング、パッチ適用、監視など、インフラ管理の負担が発生します。例えば、定期的なメンテナンスやセキュリティアップデートを自分で行う必要があります。
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複雑性 インフラ設定やメンテナンスが必要なため、初心者には難しい場合があります。初めてインフラを管理する場合、適切な設定や管理方法を学ぶために時間と労力がかかることがあります。
このように、ECS on EC2は高度なカスタマイズ性を提供する一方で、インフラ管理の負担が伴います。適切な管理を行うことで、効率的かつコスト効果の高いシステムを構築することが可能です。
Fargateとは?
概要と仕組み
Fargateは、インフラを気にせずにコンテナを実行できるサーバーレスのコンテナサービスです。サーバーレスとは、ユーザーがサーバーの設定や管理を行わずにサービスを利用できるアーキテクチャのことです。AWSがバックエンドを管理するため、ユーザーはインフラ管理から解放され、コンテナのデプロイと管理に集中できます。
メリットとデメリット
メリット
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サーバーレスの利便性 インフラのプロビジョニングや管理が不要で、スケーリングも自動化されているため、運用が簡単です。例えば、リソースの追加や削除が自動で行われ、手動での介入が不要です。
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迅速なデプロイ 短時間でコンテナをデプロイでき、開発サイクルの高速化が図れます。これにより、新しい機能のリリースが迅速に行えます。
デメリット
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コスト面での考慮点 使用量に応じた従量課金制のため、長期間の大量利用ではEC2よりコストが高くなる可能性があります。特に、リソースを頻繁に使用する大規模なアプリケーションの場合、コストが増加することがあります。
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カスタマイズ性の制限 インフラの詳細な設定ができないため、特定の要件に対応しにくい場合があります。例えば、特定のネットワーク設定やカスタムハードウェアリソースが必要な場合には適していません。
このように、Fargateはインフラ管理の手間を省き、迅速なデプロイを可能にする一方で、コストとカスタマイズ性に関する制限があります。Fargateを利用することで、開発者はアプリケーションのコードに集中し、インフラ管理の負担を軽減することができます。
ユースケースの比較
ECS on EC2が適している場合
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高度なカスタマイズが必要なシナリオ 特定のハードウェアリソースや設定が必要な場合。例えば、高性能なGPUが必要な機械学習モデルのトレーニングや、特定のネットワーク設定が必要なエンタープライズアプリケーションの運用など。
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長期間の利用 リザーブドインスタンスを利用することでコスト効率が良い場合。リザーブドインスタンスとは、1年または3年の期間でEC2インスタンスを予約することで、オンデマンド料金よりも割安に利用できる料金プランです。例えば、長期間にわたる大規模なデータベース運用や、継続的なデータ処理が必要なバッチ処理システムなど。
Fargateが適している場合
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サーバー管理の手間を省きたい場合 インフラ管理の負担を軽減したい場合。例えば、スタートアップ企業が迅速にアプリケーションを市場に投入したい場合や、開発者がインフラ管理から解放されてコードに集中したい場合など。
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短期間のプロジェクトや変動するワークロード スケーリングが自動化されているため、柔軟に対応可能。例えば、期間限定のキャンペーンサイトや、アクセス数が予測できないイベント時のウェブアプリケーションなど、急激なトラフィック変動に対応する必要がある場合。
このように、ECS on EC2とFargateはそれぞれ異なるユースケースに適しており、プロジェクトのニーズに応じて選択することが重要です。
コスト比較
EC2インスタンスのコスト
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リザーブドインスタンス
長期間の利用に適したコスト効率の良いオプション。例えば、1年または3年の期間でインスタンスを予約し、割引料金で利用できます。
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オンデマンドインスタンス
必要な時にのみ利用する場合に適したオプション。使った分だけ支払うため、短期間の利用に適しています。
Fargateのコスト
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従量課金制
使用量に応じて料金が発生します。短期間の利用や変動するワークロードに適していますが、長期間の大量利用では高くなることがあります。
比較表
特徴 | EC2(オンデマンド) | EC2(リザーブド) | Fargate |
---|---|---|---|
料金体系 | 従量課金制 | 前払い割引 | 従量課金制 |
初期コスト | なし | 1年または3年分の前払い | なし |
カスタマイズ性 | 高い | 高い | 低い |
管理負担 | 高い | 高い | 低い |
スケーリング | 手動または自動 | 手動または自動 | 自動 |
コスト効率 | 短期間利用に適している | 長期間利用に適している | 短期間または変動する利用に適している |
EC2インスタンスとFargateのコストは、使用する期間や用途に応じて大きく異なります。プロジェクトの特性に応じて最適なオプションを選ぶことが重要です。
まとめ
ECS on EC2とFargateにはそれぞれ異なる強みがあります。ECS on EC2は高度なカスタマイズやコスト効率を求めるプロジェクトに最適です。一方、Fargateはサーバー管理の手間を省き、迅速かつ柔軟なスケーリングが必要な場合に最適です。
自分のプロジェクトの特性やニーズを考慮し、最適なオプションを選んでください。AWSのコンテナオーケストレーションサービスをうまく活用することで、効率的かつスムーズな開発運用が実現できます。あなたのプロジェクトが成功するための一助となることを願っています。
【番外編】USBも知らなかった私が独学でプログラミングを勉強してGAFAに入社するまでの話
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比較的簡単に学習可能なWebフレームワーク(WordPress, Rails)やPython等の知識はあるが、ITの基本概念を理解していないため、単調な作業しかこなすことができないエンジニアのこと。
多くの人がフリーランスエンジニアを目指す時代に中途半端な知識や技術力でこの世界に飛び込むと返って過酷な労働条件で働くことになる。そこで、エンジニアを目指すあなたがどう学習していくべきかを私の経験を交えて書こうと思った。続きはこちらから、、、、
エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。
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