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2024.07.30

ABACとRBACの違いを徹底解説!あなたのシステムに最適なアクセス制御モデルはどっち?

はじめに

前回の記事では、RBAC(ロールベースアクセス制御)について詳しく解説しました。今回は、もう一つの代表的なアクセス制御モデルであるABAC(属性ベースアクセス制御)について詳しく紹介します。ABACは「エイバック」と読み、属性に基づいてアクセス権を決定する柔軟なモデルです。

前回の記事: https://envader.plus/article/436

現代の情報システムにおいて、適切なアクセス制御は非常に重要です。企業や組織は、機密データの保護やコンプライアンスの遵守のために、効果的なアクセス制御を実施する必要があります。ABACは、その柔軟性とスケーラビリティにより、さまざまなシナリオで利用されています。例えば、クラウドサービスの管理、データベースアクセスの制御、APIのセキュリティなど、多岐にわたる場面でABACが活躍しています。

ABAC(属性ベースアクセス制御)とは

ABAC(Attribute-Based Access Control)は、アクセス制御を属性に基づいて行う柔軟なモデルです。このモデルでは、ユーザー、リソース、アクション、および環境の属性を考慮してアクセス権を決定します。ABACはその柔軟性と詳細な制御が可能な点で、現代の情報システムにおいて重要な役割を果たしています。

定義と基本原則

ABACは、アクセス制御を属性に基づいて行うモデルです。主体、リソース、アクション、環境といった属性を基に、細かいアクセス制御ポリシーを設定できます。これにより、柔軟かつ動的なアクセス制御が可能となります。

  • 主体(Subject)

    アクセスを要求するユーザーの属性(例: ユーザーID、役職、部門)。ABACでは、ユーザーの属性が多岐にわたり、組織の人事システムやディレクトリから情報を取得することが一般的です。

  • リソース(Resource)

    アクセス対象の資産の属性(例: ファイル名、作成日、データの機密性)。リソースの属性は、ファイルやデータベースエントリの特性に基づきます。

  • アクション(Action)

    リソースに対して行う操作(例: 読み取り、書き込み、編集)。アクション属性は、ユーザーがリソースに対して何を行おうとしているかを定義します。

  • 環境(Environment)

    アクセス要求のコンテキスト(例: アクセス時刻、場所、デバイスの種類)。環境属性は、アクセスの条件や状況を表します。

主な特徴と利点

ABACの最大の特徴は、その柔軟性とスケーラビリティです。組織の成長に伴うアクセス制御の変更にも容易に対応でき、多様なシナリオに適応可能です。特に、以下の点がABACの利点として挙げられます。

  • 柔軟なポリシー設定
    属性の組み合わせにより、多様なアクセスシナリオに対応可能です。

  • スケーラビリティ
    システムの規模が大きくなっても、効率的にアクセス制御を維持できます。

  • セキュリティ強化
    詳細なアクセス制御が可能なため、セキュリティリスクを低減できます。

適用例

  • ビジネスシナリオ

    部門ごとに異なるアクセス権を設定する場合。例えば、営業部門の社員が特定の顧客データにアクセスできるようにする一方で、他の部門の社員はアクセスできないようにすることができます。

  • クラウド環境

    ダイナミックなアクセス制御が必要な場合。クラウドサービスでは、アクセス要件が頻繁に変わるため、ABACの柔軟なポリシー設定が有効です。

このように、ABACは多様なシナリオに対応できる柔軟なアクセス制御モデルとして、今日の情報システムで重要な役割を果たしています。

RBAC(ロールベースアクセス制御)とは

定義と基本原則

RBAC(Role-Based Access Control)は、ユーザーの役割に基づいてアクセス制御を行うモデルです。ユーザーは特定の役割に割り当てられ、その役割に対応するアクセス権限が付与されます。このモデルでは、各役割に対して特定のアクセス権限が設定され、ユーザーがその役割を持つことでその権限が適用されます。

主な特徴と利点

RBACの最大の特徴はそのシンプルさと管理の容易さです。役割ごとにアクセス権限を設定するため、権限の管理が簡単で、変更も容易です。特に、中小企業や役割分担が明確な組織において、効率的に利用できます。

  • シンプルさ
    ユーザーごとに詳細なアクセス権を設定する必要がなく、役割ごとに権限を設定するだけで済むため、管理が簡単です。

  • 管理の容易さ
    役割が変更されるだけで、ユーザーのアクセス権限も自動的に更新されるため、運用管理が容易です。

適用例

  • 組織内シナリオ
    明確な役割分担が存在する企業では、各部門や職務に応じた役割を設定し、その役割に対応する権限を付与することで、効率的にアクセス制御を行うことができます。

  • 中小企業
    管理のリソースが限られている場合、RBACのシンプルな管理モデルは非常に有効です。例えば、小規模なIT企業では、開発者、テスター、管理者といった役割に応じたアクセス権限を設定することで、セキュリティを維持しつつ効率的な運用が可能です。

RBACは、そのシンプルさと管理の容易さから、特に中小企業や明確な役割分担が必要な組織において効果的なアクセス制御モデルです。

ABACとRBACを徹底比較!

アクセス制御の基準の違い

ABACは属性に基づき、RBACは役割に基づいてアクセス制御を行います。この違いが、それぞれのモデルの適用シナリオや管理の複雑さに影響します。

項目ABACRBAC
アクセス基準属性(ユーザー、環境、リソース属性)役割
柔軟性高い低い
スケーラビリティ高い中程度
管理の複雑さ高い低い
適用シナリオダイナミックかつ複雑な環境明確な役割分担がある組織
利点詳細なアクセス制御が可能簡単に実装・管理が可能
欠点設計と管理が難しい柔軟性が低い

詳細な比較と追加の考慮点

アクセス制御の柔軟性

ABACは属性に基づいているため、非常に柔軟なアクセス制御を実現できます。例えば、ユーザーが特定の場所にいる場合や特定の時間帯にアクセスを制限することが可能です。一方、RBACはユーザーの役割に基づいてアクセスを制御するため、柔軟性は低いですが、シンプルで管理しやすいという利点があります。

スケーラビリティの比較

ABACは属性に基づくため、大規模なシステムでも効率的に管理できます。特に、クラウドベースのサービスや多くの変数を持つ環境では、そのスケーラビリティが強みとなります。RBACは中規模のシステムに適しており、役割の数が増えすぎると管理が複雑になる可能性があります。

管理の複雑さ

ABACは柔軟性が高い反面、ポリシーの設計や管理が複雑になります。多くの属性を考慮する必要があり、そのためのポリシーも詳細かつ複雑になります。RBACはシンプルな役割ベースのため、比較的管理が容易で、特に小規模な組織では効果的に運用できます。

適用シナリオ

ABACはダイナミックで複雑な環境に適しています。例えば、クラウドベースのサービスや大規模な企業で、多様なアクセス要求に対応する必要がある場合に適しています。RBACは、役割が明確であり、特定の業務プロセスが固定されている組織に適しています。

実際の導入事例

ABACの導入事例

  • クラウドサービスの管理
    多くのクラウドプロバイダーがABACを採用し、ユーザーごとに異なるアクセス制御を実現しています。例えば、AWS(Amazon Web Services)はABACを用いて、リソースへのアクセスをタグや属性に基づいて制御しています。

  • データベースアクセスの制御
    データベースシステムでは、ユーザーの属性に基づいて特定のデータへのアクセスを制限することが一般的です。これにより、機密情報の保護が強化されます。

RBACの導入事例

  • 企業内のIT管理
    多くの企業がRBACを利用して、従業員の役割に応じたアクセス権限を設定しています。例えば、IT部門のスタッフがシステム管理者の権限を持ち、一般社員は基本的なユーザー権限のみを持つように設定します。

  • 中小企業のアプリケーション管理
    中小企業では、RBACを用いて簡単にアクセス制御を実装し、管理の手間を省いています。例えば、小規模な開発チームで開発者、テスター、管理者といった役割に応じた権限を設定することが一般的です。

特徴と選択肢

ABACとRBACはそれぞれ異なる特性と利点を持つアクセス制御モデルです。ABACは柔軟性とスケーラビリティが高く、多様な環境に適応できますが、管理が複雑になる可能性があります。一方、RBACはシンプルで管理が容易なため、特に中小企業や明確な役割分担が必要な組織に適しています。組織の規模やセキュリティ要件に応じて、適切なモデルを選択することが重要です。

ABACとRBAC、どちらを選ぶべき?

選択基準

ABACとRBACのどちらを選ぶかは、組織の特定のニーズや環境に依存します。以下の基準に基づいて、最適なアクセス制御モデルを選択する際の参考にしてください。

組織の規模や複雑さ

  • 大規模で複雑な環境 大規模な組織や複雑なITインフラを持つ企業では、ABACが適しています。ABACは、多様な属性に基づいてアクセス制御を行うため、細かい制御が可能です。このため、多くのユーザーやリソースが関わる環境でも柔軟に対応できます。

    例えば、多国籍企業やクラウドサービスプロバイダーでは、異なる国や地域、部門ごとに異なるアクセス権限を設定する必要があります。ABACはこれらのニーズに対応しやすいモデルです。

  • 小規模でシンプルな環境 小規模な組織や明確な役割分担がある環境では、RBACが有効です。RBACは、役割に基づいてアクセス権限を設定するため、管理がシンプルで容易です。役割が少なく、変動が少ない環境では、RBACの方が効率的に運用できます。

    例えば、小規模なスタートアップ企業や特定の業務プロセスが固定されている企業では、RBACを使用することで、簡単にアクセス権限を管理できます。

セキュリティ要件と管理リソース

  • 高いセキュリティ要件 セキュリティが非常に重要な場合、ABACが適しています。ABACは、属性に基づいて詳細なアクセス制御を設定できるため、セキュリティポリシーを細かく調整することができます。そのため、より厳格なセキュリティ要件を満たすことができます。

    例えば、金融機関や医療機関では、特定の時間帯や場所からのアクセスを制限するなど、厳格なセキュリティポリシーが必要です。ABACを使用することで、これらの要件を満たすことができます。

  • 管理リソースの制約 管理リソースが限られている場合、RBACが適しています。RBACは管理がシンプルで、役割ごとにアクセス権限を設定するだけで済むため、運用管理が容易です。少ないリソースで効果的にアクセス制御を実施できます。

    例えば、IT管理のリソースが限られている中小企業では、RBACを使用することで、簡単かつ効率的にアクセス権限を管理できます。

最適な選択のために

ABACとRBACはそれぞれ異なる特性を持ち、それぞれの利点を活かすことで、組織のニーズに最適なアクセス制御モデルを選択することができます。組織の規模、IT環境の複雑さ、セキュリティ要件、管理リソースを総合的に評価し、適切なモデルを選びましょう。

ABACの導入手順

事前準備と要件定義

ABACの導入を成功させるためには、事前準備と要件定義が重要です。以下の手順を踏んで準備を進めましょう。

  • 属性の選定
    組織のニーズに基づいて、どの属性を使用するかを選定します。例えば、ユーザーの役職、部門、セキュリティクリアランス、リソースの機密性や作成日、アクセスする時間帯や場所など、様々な属性が考えられます。

  • ポリシーの設計
    選定した属性に基づいて、アクセス制御ポリシーを設計します。具体的には、「営業部門のマネージャーは平日9時から18時まで顧客データにアクセスできる」などの詳細なポリシーを設定します。

実装手順

ABACのポリシーを実際にシステムに導入する手順は以下の通りです。

  1. ポリシーの設計
    属性を基にした詳細なポリシーを設計します。これには、どの属性がどのような条件でアクセスを許可するかを具体的に定義する作業が含まれます。

  2. システムの設定
    属性情報の管理システムを設定し、設計したポリシーを実装します。これは、ディレクトリサービスやID管理システムなどを利用して、ユーザーやリソースの属性を適切に管理することを意味します。

管理とメンテナンス

ABACシステムを導入した後も、継続的な管理とメンテナンスが必要です。

  • ポリシーの見直しと更新
    定期的にアクセス制御ポリシーを見直し、組織の変化や新たなセキュリティ要件に応じて更新します。これにより、常に最新のセキュリティ基準を満たすことができます。

  • セキュリティの維持
    システムの監視とログの解析を行い、不正アクセスや異常な活動を検出します。必要に応じて、ポリシーの調整やシステムの強化を行います。

ABACの導入と運用には継続的な努力と注意が必要ですが、その柔軟性と細かい制御が可能な点で、組織のセキュリティを大幅に強化することができます。

まとめ

ABACとRBACの違いとそれぞれの利点・欠点を理解することで、自社に最適なアクセス制御モデルを選ぶことができます。ABACは柔軟性とスケーラビリティに優れ、ダイナミックな環境に適していますが、設計と管理が難しい点もあります。一方、RBACはシンプルで管理が容易なため、小規模な組織に適しています。組織の規模やセキュリティ要件に応じて、適切なモデルを選択しましょう。

選択する際には、組織の特定のニーズやリソースを考慮することが重要です。ABACの柔軟性が必要な場合もあれば、RBACのシンプルさが効率的な場合もあります。それぞれのモデルが提供する特性を理解し、最適なアクセス制御を実現するための参考にしてください。

参考資料

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エンベーダー編集部

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