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2023.12.27

エンジニアとしてガバメントクラウドを扱うことになったら

  • インフラエンジニア

令和5年度の新規事業者選定で、さくらインターネットが提供する「さくらのクラウド」が国産初となるガバメントクラウド対象となりました。これまで国外サービスしかなかったので、ようやく日本企業が参入できた形です。この記事では、ガバメントクラウド(gov-cloud)とは何か?ということを説明していきます。

https://www.sakura.ad.jp/corporate/information/newsreleases/2023/11/28/1968214232/

ガバメントクラウドは、クラウドコンピューティング技術を政府機関の業務に適用したシステムです。このシステムは、データの保存・アクセス・管理を改善し、政府の効率性と柔軟性を高めることを目的としています。日本においてガバメントクラウドの導入は、政府業務のデジタル変革と公共サービスの向上に不可欠な役割を果たしています。

端的にいうと政府が要求する基準を満たしたクラウドサービスプロバイダーということです。これらから政府システムは調達されます。

以下は、ガバメントクラウド事業者としてのAWS, GCP (Google Cloud Platform), Azure, Oracle Cloud, さくらインターネットの概要を表にまとめたものです。ただし、各企業のサービスや特徴は常に進化しているため、最新の情報はそれぞれの公式サイトで確認することをお勧めします。

クラウドサービスプロバイダー特徴
AWS (Amazon Web Services)AWSはISMAP認定を受けており、日本のガバメントクラウド市場において広く利用されています。
GCP (Google Cloud Platform)GCPは、データアナリティクス、機械学習、オープンソース技術などに強みを持つクラウドサービスプロバイダーです。
Azure (Microsoft)MicrosoftのAzureは、幅広いクラウドサービスを提供しており、特にエンタープライズレベルのソリューションで強みを持っています。
Oracle CloudOracle Cloudは、特にデータベースサービスとエンタープライズアプリケーションに強みを持つクラウドプラットフォームです。
さくらインターネットさくらインターネットは、日本国内で強固な地位を持つクラウドサービスプロバイダーです。

日本におけるガバメントクラウドの意義

セキュリティとプライバシーの強化

政府データは国民の個人情報を含むため、高度なセキュリティとプライバシー保護が必要です。ガバメントクラウドは、これらのデータを保護するために特別に設計されたセキュリティ機能を提供します。

効率的なリソース管理

従来のシステムでは、リソースの配分や更新に時間とコストがかかりました。ガバメントクラウドでは、リソースを必要に応じて迅速に割り当て、管理することが可能です。

災害対策と持続可能性

日本は地震や台風などの自然災害が多い国です。ガバメントクラウドは、災害時のデータの安全と政府機関の連続的な運営を保証するために重要です。

市民へのサービスの改善

クラウドを活用することで、市民へのサービス提供をより迅速かつ効率的に行うことができます。これにより、行政サービスの質の向上が期待されます。

デジタルトランスフォーメーションの推進

日本政府はデジタルトランスフォーメーションを推進しており、ガバメントクラウドはその重要な柱の一つです。

これらの点を踏まえると、日本におけるガバメントクラウドの導入は、国としてのデジタル化戦略の中核を成し、国民生活の質の向上、効率的な公共サービスの提供、そして災害対応能力の強化に寄与しています。

ガバメントクラウドの歴史

初期段階(2000年代後半~2010年代前半)

政府機関はクラウドの可能性を模索し始め、技術的およびセキュリティ上の障壁に直面しました。この時期、クラウド技術はまだ十分に成熟しておらず、セキュリティリスクも高かったため、本格的な移行は進まなかった。

移行段階(2010年代後半~2020年代前半)

技術とセキュリティの課題が解決されるにつれ、クラウドへの移行が加速。米国では「クラウドファースト」政策やFedRAMPなどが導入され、クラウド移行を推進しました。

活用段階(2020年代後半~)

クラウドが政府のミッション強化に不可欠なツールとして認識されるようになり、行政サービスのデジタル化や効率化に活用されています。

日本では、2018年の「デジタル・ガバメント実行計画」の閣議決定により、ガバメントクラウドの推進が本格化し、2025年度末までに全ての地方自治体がガバメントクラウドを導入することを目指しています。これにより、日本の行政サービスもデジタル化と効率化が進んでいます。

ガバメントクラウドの必要性

ガバメントクラウドの必要性は、日本を含む多くの国々で政府業務のデジタル化と効率化に重要な役割を果たしています。特に、データセキュリティ、コスト削減、災害時のリスクマネジメントにおいて、クラウドの利用が重要視されています。

政府機関ではセキュリティとプライバシーが優先されるため、クラウド導入に際しては、これらの要件を満たすセキュリティ基準の確立が必須です。日本では、情報システムセキュリティマネジメント・アセスメントプログラム(ISMAP)などのセキュリティ基準を通じて、ガバメントクラウドの安全性を保証しています​​​​​​。

https://www.ismap.go.jp/csm?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0010005&sys_kb_id=ac3fea881ba13410f18c65fa234bcb3b&spa=1

また、クラウドの導入は、政府機関にとって効率的なリソース管理とコスト削減を実現します。旧来のシステムから最新のクラウドベースのソリューションへの移行により、サービスの提供が改善されることが期待されます​​​​。

さらに、災害時や緊急事態においては、クラウドがリスクマネジメントに重要な役割を果たします。その柔軟性とスケーラビリティにより、政府機関は迅速に対応し、市民へのサービスを継続することが可能になります。これは、日本のように自然災害が多い国において特に重要です​​。

このように、ガバメントクラウドは、セキュリティ、効率性、災害対応能力の向上において、日本を含む世界各国の政府機関にとって不可欠なテクノロジーとなっています。

ガバメントクラウドの導入事例とその成果

ガバメントクラウドの採用は世界中の多くの政府機関で進行しており、その動きは特にパンデミックによって加速されました。クラウドの柔軟性とスケーラビリティにより、政府はサービスへの需要の急増やリモートワークへの急速な移行など、緊急の課題に対応できるようになりました。

例えば、米国では2010年に「クラウドファースト」政策が導入され、これにより多くの政府機関が非臨界的なアプリケーション(例えば電子メールサービス)をクラウドに移行しました。しかしDeloitte insightsによると、一部の公共機関は、期待されていた運用上の改善やデータアクセスが完全に実現されていないと述べています。政府のクラウド移行は、コスト削減だけでなく、ミッションのサポートにも重点を置くべきだという考えが浮上しています。

日本でのガバメントクラウドの現状と展望

日本では、「デジタル・ガバメント実行計画」の一環としてガバメントクラウドの推進が進められています。この計画は、行政サービスのデジタル化と効率化を目指しており、2025年度末までにすべての地方自治体がガバメントクラウドを導入することを目標としています。この取り組みは、政府機関によるデジタル変革の推進と、国民へのサービス提供の向上を図るものです。

技術的課題

ガバメントクラウドの技術的課題としては、以下のようなものが挙げられます。

クラウドサービスの技術的進化のスピードに対応する必要がある

クラウドサービスは、常に新しい技術が導入され、進化しています。政府機関は、これらの技術的進化に対応するために、クラウドサービスの導入・運用・管理の体制を常に見直す必要があります。

クラウドサービスとオンプレミス環境の連携を実現する必要がある

政府機関は、クラウドサービスとオンプレミス環境を連携させて利用することが求められます。しかし、クラウドサービスとオンプレミス環境は、それぞれ異なる技術や仕組みに基づいて構築されているため、連携には技術的な課題があります。

サイバーセキュリティ対策を強化する必要がある

クラウドコンピューティングは、オンプレミス環境と比較してセキュリティ上のリスクが高くなります。政府機関は、クラウドコンピューティングのセキュリティ対策を強化するために、クラウドサービス事業者との連携や自らのセキュリティ対策の強化を進めています。

政策的な課題

ガバメントクラウドの政策的な課題としては、以下のようなものが挙げられます。

ガバメントクラウドの標準化を進める必要性がある

政府機関は、複数のクラウドサービス事業者からクラウドサービスを調達する可能性があります。この場合、各クラウドサービス事業者のサービスや仕様が異なるため、運用や管理が複雑になるという課題があります。政府機関は、ガバメントクラウドの標準化を進めることで、この課題を解決することを目指しています。

ガバメントクラウドのガバナンスを確立する必要がある

政府機関は、クラウドサービスの利用を通じて、国民の個人情報や機密情報を扱うことになります。政府機関は、ガバメントクラウドの利用に係るガバナンスを確立し、情報セキュリティの確保や透明性の確保を図る必要があります。

国民生活への影響

ガバメントクラウドの普及は、国民生活にさまざまな影響を及ぼすと考えられます。

行政サービスの利便性向上

ガバメントクラウドを活用することで、行政サービスのオンライン化やデジタル化が進み、国民はより便利に行政サービスを利用できるようになります。例えば、オンラインで申請・手続きを行うことが可能になったり、行政サービスの情報をスマートフォンなどでいつでもどこでも確認できるようになったりする可能性があります。

データ利活用の促進

ガバメントクラウドを活用することで、行政データの利活用が促進されます。これにより、国民の生活に役立つ新たなサービスや事業の創出が期待されます。例えば、行政データに基づいた交通状況や災害情報の提供、行政サービスの効率化などが考えられます。

官民連携の推進

ガバメントクラウドを活用することで、官民連携の推進が期待されます。例えば、政府機関が提供するデータやサービスを民間企業が活用することで、新たなビジネスの創出や社会課題の解決につながる可能性があります。

今後のガバメントクラウドの発展の可能性と方向性

ガバメントクラウドは、今後もさらに発展していくと考えられます。具体的には、以下の可能性が挙げられます。

マルチクラウド化の進展

複数のクラウドサービス事業者からクラウドサービスを調達するマルチクラウド化が進むと考えられます。これにより、クラウドサービスの選択肢が広がり、よりニーズに合ったクラウドサービスの利用が可能になる可能性があります。

エッジコンピューティングの活用

エッジコンピューティングとは、データの発生地点に近い場所で処理を行うコンピューティングのことです。ガバメントクラウドとエッジコンピューティングを組み合わせることで、よりリアルタイムで高品質なサービスを提供することが可能になる可能性があります。

AIや機械学習の活用

AIや機械学習は、ガバメントクラウドのさまざまな場面で活用されるようになると考えられます。例えば、行政データの分析や、行政サービスの自動化などに活用される可能性があります。

まとめ

ガバメントクラウドとは、政府機関が利用するクラウドコンピューティングのことです。クラウドコンピューティングとは、インターネット上でコンピューターやストレージなどのITリソースを提供するサービスです。ガバメントクラウドは、クラウドコンピューティングのメリットであるスケーラビリティや可用性、セキュリティを活かして、行政サービスの効率化やデジタル化を推進するために活用されています。

エンジニアとして、ガバメントクラウド事業への参加の可能性を考え、その分野の最新動向をキャッチアップを心掛けることが重要です。

参考資料

https://www.digital.go.jp/policies/gov_cloud

エンベーダー編集部

エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。

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