はじめに
Gitでの開発作業において、「変更内容の確認」や「作業途中の変更を一時的に退避する」操作は日常的に必要となります。
そんな場面で活躍するのが、変更確認に必要な git status
・git diff
と、変更を一時保存できる git stash
の3つのコマンドです。
これらのコマンドを学ぶことで、状況に応じた適切な変更内容の確認と、スムーズな作業の中断・再開が可能になります。本記事では、初心者の方にも分かりやすく、実践的な使いかたをやさしく解説していきます。
Gitについての基本
Gitは、ファイルの変更履歴を管理するバージョン管理ツールです。個人の作業でもチーム開発でも、「誰が・いつ・何を」変更したのかを記録でき、安心して作業が進められます。
Gitの基本をさらに知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
▼Gitを基礎から学びたい方はこちら
【初心者向け】GitHubとは?必須知識と使い方について解説!
https://envader.plus/article/68
▼Gitコマンド早見表はこちら
必見!現場で役立つGitコマンド29選をまとめて紹介!
https://envader.plus/article/402
▼「エンベーダー」ではGitの基本コマンドを実践で学べます。
エンベーダー公式サイト - Gitの使い方コース
https://envader.plus/course/5/scenario/1055
Gitでよく使うコマンド:status・diff・stash
Git操作に少し慣れてくると、変更内容の確認や作業の一時退避に役立つ git status
・git diff
・git stash
を使う機会が増えてきます。これらは作業を安全かつ効率的に進めるための基本コマンドでもあります。
3つのコマンドは以下の場面で使用します。
git status
:変更されたファイルの有無やステージング状況の確認git diff
:ファイルの中でどの行が変更されたかの確認git stash
:進行中の変更内容の一時退避
この3つを組み合わせると、例えば次のような流れで作業を整理できます。
git status
で「変更があるか」を把握git diff
で「どこが変わったか」を詳細に確認- 必要に応じて
git stash
で変更内容を退避
次のセクションで、それぞれのコマンドを詳しく見ていきましょう。
git status とは
git status
は、現在のリポジトリで「どのファイルが変更され、どの状態にあるのか」を一覧で確認できるコマンドです。コミット前に状況を整理するのに欠かせません。
git status の使い方
git status
の基本コマンドです。実行すると変更状況を一覧で確認できます。
git status
コマンド実行例
git status
の実行例です。
$ git status
On branch main
No commits yet
Changes to be committed:
(use "git rm --cached <file>..." to unstage)
new file: README.md
Changes not staged for commit:
(use "git add <file>..." to update what will be committed)
(use "git restore <file>..." to discard changes in working directory)
modified: README.md
この例では、README.md
が新規ファイルとしてステージされていますが、その後さらに編集されたため「未ステージの変更」としても表示されています。
※ modified
は修正済みで、まだ add されていない変更を意味します。
git diff とは
git diff
は、ファイルのどの部分が変更されたのかを確認するコマンドです。git status
が「変更のあるファイル」を一覧するのに対し、git diff
は「具体的に何行目がどう変わったのか」を表示します。
git diff の使い方
git diff
の基本コマンドです。実行すると、まだステージされていない変更内容を確認できます。
git diff
コマンド実行例
次の例では、新しく作成された README.md
ファイルの差分を確認しています。
$ git diff
diff --git a/README.md b/README.md
index e69de29..4169e1c 100644
--- a/README.md
+++ b/README.md
@@ -0,0 +1 @@
+This is a README file.
この出力から、README.md
ファイルに This is a README file.
という1行が追加されたことがわかります。
git stash とは
git stash
は、作業中の変更を一時的に退避するコマンドです。コミットせずにワークツリーを保存してクリーンな状態に戻し、必要に応じて後から復元できます。
git stash の使い方
git stash
はオプションなしでも使えますが、状況に応じて次のように使い分けると便利です。
git stash # 変更を一時退避
git stash push -m "メッセージ" # メッセージ付きで変更を保存
git stash list # 退避した内容の一覧を確認
git stash apply # 直前のstashを復元
git stash drop # 指定したstashを削除
コマンド実行例
以下の例では、作業中の変更をWIP: テキストの追加
という名前で保存されます。
$ git stash push -m "WIP: テキストの追加"
Saved working directory and index state On main: WIP: テキストの追加
※WIPは Work in Progress の略で、日本語では「作業中」という意味です。Gitでは作業中の変更を一時的に保存する際に、WIPというメッセージが慣習的によく使われます。
▼stashについては以下の記事で詳しく解説しています。
git stashとは?基本の使い方から活用方法、注意点まで徹底解説
https://envader.plus/article/344
3つのコマンドの基本を理解したところで、次は特に利用頻度が高い git diff
をさらに活用する方法を見ていきましょう。
git diff をさらに活用する
git diff
は基本的な使い方だけでなく、オプションを組み合わせることで状況に応じた差分確認ができます。ここでは、実務で役立つ使い分けを整理します。
差分確認のバリエーション
-
未ステージの変更を確認
編集したファイルのうち、まだステージされていない差分を表示します。基本の使い方として最初に覚えておくと便利です。
git diff
-
ステージ済みの変更を確認
インデックスに追加済みの変更を表示します。
git diff --staged
※
--cached
も同じ意味を持つオプションとして利用できます。 -
特定ファイルの差分を確認
指定したファイルだけの変更点を表示します。
git diff ファイル名
-
ブランチ間の差分を確認
2つのブランチ間の変更点を比較します。レビュー前の確認に便利です。
git diff main..feature
-
空白やインデントの変更を無視して確認
「空白変更で差分が多く見えて困る」といった場面で役立ちます。
git diff -w
git diff 変更内容の確認方法
git diff
の出力には特殊な記号やハンク情報(変更範囲を示す情報)が含まれており、これを理解することで差分を正確に把握できます。
$ git diff
diff --git a/README.md b/README.md
index e69de29..4169e1c 100644
--- a/README.md
+++ b/README.md
@@ -0,0 +1 @@
+This is a README file.
出力内容の見方
出力内容 | 意味 |
---|---|
diff --git a/README.md b/README.md | a/ が変更前、b/ が変更後のファイルを表す |
index e69de29..4169e1c 100644 | 変更前後のハッシュ値とファイルモードを示す(100644は通常のテキストファイル) |
--- a/README.md / +++ b/README.md | 変更前と変更後のファイルを示す |
@@ -0,0 +1 @@ | ハンク情報を示し、変更前は行が存在せず(-0,0)、変更後に1行追加された(+1)ことを意味する |
+This is a README file. | + は追加行を意味し、削除行の場合は - で表示される |
補足:
Windows環境では、以下のように改行コードに関する警告が出る場合があります。これはOSごとの改行コードの違い(LinuxはLF、WindowsはCRLF)によるものです。Gitが自動で変換するため、内容や差分の確認には影響ありません。
warning: in the working copy of 'README.md', LF will be replaced by CRLF the next time Git touches it
git diff の終了方法
git diff
の実行時にページャが起動した場合、q
キーを押すと通常のターミナルに戻れます。
git diff
を実行すると、差分が多い場合に自動的にページャ(less
という閲覧ツール)が起動することがあります。このとき画面がスクロール状態になり、抜け方が分からず戸惑うことがありますが、q
キーで終了できることを覚えておけば安心です。
ページャの操作方法
操作キー | 動作内容 |
---|---|
q | 終了 |
スペース | 次のページへ進む |
b | 前のページへ戻る |
j / k | 1行ずつ移動 |
/検索語 | 差分内の文字列検索 |
ここまで git diff
の活用方法を整理しました。次は git stash
に進み、退避した変更内容を一覧や差分として確認する方法を見ていきます。
git stash の内容を確認する
git stash
で退避した変更は、あとから一覧や差分を確認できます。退避した内容を把握できると、「どの作業を保存したのか分からなくなった」といった混乱を防げます。
stash の一覧を確認
保存した stash は git stash list
で一覧表示できます。
$ git stash list
stash@{0}: On main: WIP: テキストの追加
stash の差分を確認
特定の stash の中身は git stash show
で確認できます。
$ git stash show stash@{0}
README.md | 1 +
1 file changed, 1 insertion(+)
さらに詳細な差分を見たいときは -p
を付けます。
$ git stash show -p stash@{0}
diff --git a/README.md b/README.md
index e69de29..7a280cf 100644
--- a/README.md
+++ b/README.md
@@ -0,0 +1 @@
+This is a README file.
\ No newline at end of file
※ git stash show -p
の出力は git diff
と同じフォーマットで表示されるため、見方は共通です。
この記事で学んだこと
この記事では、変更確認や作業管理に欠かせない Git コマンドを取り上げ、それぞれの使い方や活用方法を学びました。最後に、学んだポイントを簡単に振り返ってみましょう。
git status
:変更されたファイルの有無やステージング状況を確認git diff
:ファイル内でどの行が変更されたかを確認git stash
:作業中の変更内容を一時的に退避し、必要に応じて差分を確認
git diff
では、オプションを使い状況に応じた差分確認や、出力の読みかた、終了方法を理解することで、より柔軟に変更内容を把握できるようになります。さらに、git stash
では一覧表示や差分の詳細確認を学ぶことで、作業の中断と再開をスムーズに行えるようになり、Gitを一段と使いこなせるようになります。
Git にはほかにも便利なコマンドや活用方法が数多くあります。今回の内容を押さえたら、ぜひ次はブランチ操作やコミット管理にも挑戦してみてください。日々の作業がさらに整理され、バージョン管理の理解が広がっていきます。
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参考資料
以下のリンクは、この記事で解説した手順や概念に関連する参考資料です。より詳しく学びたい方は、ぜひご覧ください。
-
Git公式 - git status
-
Git公式 - git diff
-
Git公式 - git stash
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エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。

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