この記事では、データセンターについての詳細や似た概念であるクラウドと比較した内容を解説します。
データセンターとは
引用元:データセンターとは?クラウドとの違いを利用用途やメリットを基に解説 アイティーエム
インターネット用のサーバやデータ通信、固定・携帯・IP電話などのIT機器を安全に保管するためのスペース、遠隔でシステムを利用するための回線、稼働させるための電力を提供することに特化した施設のことです。単に建物だけを意味するわけではなく、サーバーを安定的に稼働させるための電力やネットワークをはじめとして、さまざまな機能を総称してデータセンター(DC)という呼称が使われています。特にインターネット接続に特化したものをiDC (Internet data center)と言う場合があります。
データセンターにも種類があり、以下の4つに分けられます。
-
エンタープライズデータセンター
建物とそこに収容されている設備や機器は全て1社で管理されます。自社システムのための自社設備です。
-
コロケーションデータセンター
建物と設備はデータセンター事業者が管理し、ラックやエリアを利用顧客にリース(長期間賃貸)します。
-
ホールセール・データセンター
一般に建物全体を1企業顧客に丸々リースする形態です。建物の維持以外は全てリース先企業に委ねます。
-
マネージド・サービス・プロバイダー
MSP(Managed Service Provider)は、一般的にデータセンター設備のスペースを借り、そこで自社のサーバーなどのIT機器を稼働させ、サービスを提供します。クラウドやホスティングサービスはこれの一形態です。
データセンターの役割
データセンターは、企業がIT機器を運用するために必要な物理的スペースや電源、空調設備等を提供し、運用にかかる負担を軽減する役割を担っています。また、データセンターはセキュリティ対策のため詳細な場所は非公開となっており、物理的な攻撃を受けるリスクを軽減する役割もあります。セキュリティ対策以外でも、災害時、万が一自社が被災した場合、遠隔地のデータセンターを利用することで、システムが同時被災を受けず事業継続ができるというBCP(Business Continuity Plan)対策やDR(Disaster Recovery)対策としての側面の役割もあります。
-
BCP対策とは
企業が自然災害やサイバー攻撃などで影響を受けた際に、どのように行動し、事業を継続したり復旧したりするかを考えておく計画のことです。 「事業継続計画」 とも呼ばれています。BCP対策で想定する緊急事態には、以下のものが挙げられます。
- 地震や台風、水害などの自然災害
- 火災
- 戦争やテロ
- 感染症の流行による被害
- サイバー攻撃
- 設備事故
-
DR対策とは
BCPが総合的な事業継続計画であるに対し、DRは主にシステムに特化した復旧・修復計画です。DRはBCPの一部ととらえる考え方もあります。予期していないトラブルがあった際にシステムを素早く復旧できると、事業の利益損失につながるリスクを回避できるため、事業の立て直しまでの費用や時間を削減できる効果などが期待でき、あらゆる業種において情報関連のインフラやシステムが重要な役割を果たすようになった現代で、DRの需要は急速に増えてきています。
データセンターで提供される設備
場所の提供
引用元:データセンターとは?クラウドとの違いを利用用途やメリットを基に解説 アイティーエム
データセンターにはサーバーを設置するため、それなりに大きな物理スペースが必要になります。もちろん設置場所だけではなく、サーバーの組立・分解ができる作業スペースや関係者が休むための休憩スペースも備えられています。
電力の提供
サーバーを動かすための電力もデータセンターの設備に含まれる大切な要素のひとつです。データセンターでは電源容量や電源系統の管理が充実しており24時間365日停電の心配がなくサーバの管理が可能です。また、災害時にも電力の供給が止まることなく、停電などの不測の事態に対応するため、UPS(Uninterruptible Power System)や自家発電設備とその為の燃料が常備されています。
-
UPS(無停電電源)とは、電力会社からの電力供給がストップしたことをデータセンターの受電装置が検知し、UPSが電力供給を開始する設備です。電力供給時間は製品により異なりますが、通常は数分から数十分かかります。この間に自家発電設備が稼働し、電力供給の準備を行うという仕組みです。
-
ネットワークの冗長性
サーバーをインターネット環境に接続するためには、インターネット回線が必要になります。データセンターでは、アクセスが集中した場合でもスイッチやルーターを複数設置し、災害時に備えて少しでも多くの回線ルートを準備しており、一つのルートが遮断されてしまっても、他のルートで回線を通してネットワークに接続できます。
インターネット接続
インターネットへ接続するための通信回線を提供します。データセンターでは、アクセスが集中した場合でもスイッチやルーターを複数設置し、災害時に備えて少しでも多くの回線ルートを準備しており、一つのルートが遮断されてしまっても、他のルートで回線を通してネットワークに接続できます。
空調管理
複数のサーバーを同時に稼働させた場合、データセンター内には大量の熱が発生するため、空調が重要な役割を果たします。サーバーを安定的に稼働させるためには、温度を「18℃~27℃」、湿度を「35%~60%」に保つ必要があり、災害時に備えて無停止空調システムやPUE(Power Usage Effectiveness)と呼ばれる電気効率を示す指標を用いて、水冷式空調や空冷式空調等のさまざまな空調方式を導入しています。
- PUEとは、「電力使用効率」を意味する指標。データセンター施設全体の消費電力を、サーバーや通信機器などIT機器で利用する消費電力を割ることで算出されます。理論上の最良値は「1.0」ですが、これは施設の全電力をIT機器だけで利用するという意味です。現実的には施設で照明や空調などの付帯設備を利用しているため、「1.0」に近似すればするほど、当該データセンターの電力使用効率が高いと評価されます。
- 水冷式空調とは、水を利用して熱交換をすることによって、循環水を冷却します。水を利用するため、冷却効率は空冷式に比べ良好ですが配管工事が必要になります。
- 空冷式空調とは、熱を空気中に放出する冷却方式。基本的に冷却のための特別な装置は何もついておらず、走行風を利用するだけというシンプルな構造で、水冷式に比べて冷却効果は低いです。
災害対策
サーバは精密機器のため強い衝撃に弱く、大規模な地震により転倒してしまった場合は、コンピュータが物理的に破損してしまい故障によるシステム障害を引き起こしてしまいます。データセンターは耐震構造、免震構造で設計された設備で大規模な地震でも十分に耐えれる堅牢な建物です。また、サーバが保管されているサーバルームにはラックがあり、それぞれが固定されているため地震によるサーバ転倒を防止することが可能です。また、火災検知・消化システムもサーバーが壊れないようにする対策もとられています。
セキュリティ
有人受付、セキュリティゲート、監視カメラ、24時間有人の警備体制に加え、生体認証(静脈認証)装置が導入されています。
指静脈認証は、もっとも導入されている生体認証装置です。指の内部にある静脈パターンを読み込んで、個人を特定します。静脈パターンはたとえ双子であっても違うため、高いセキュリティ効果が見込まれます。
さらに入口からサーバ室までには何重ものセキュリティチェックが行われ、入館者それぞれにセキュリティレベルの設定がされています。サーバ室の入口は、入室記録がないと退室できないアンチパスログ方式や、一つ目の扉を閉めないと次の部屋に進めないインターロック方式なども組み込まれ、さまざまな設備や方法でサーバの安全を守ります。
データセンターの利用方法
データセンターは自社で所有していない場合、データセンター事業者と契約し利用します。データセンターの管理も含め依頼する場合や場所だけ借りる場合など借り方はいくつか存在し、代表的なものとしては以下の2つが挙げられます。
ハウジング方式
データセンター内の物理スペースやラックを借りて運用する方式です。自社の状況に合わせて、物理スペースやラックのサイズ・契約数を選びます。
ハウジング方式のメリットとして、ユーザー自身が要件に合わせたサーバーやインターネット回線を選択できる点が挙げられます。言い換えると、最低限の設備を自社で揃える必要があるため、初期投資が発生したり、導入までのリードタイムが長くなるというデメリットがあります。サーバーの運用管理についても自社で実施する必要があります。
ホスティング方式
利用するサーバーやインターネット回線も含めて、事業者から借用し運用する方式です。ハウジング方式とは異なり、各種機器はデータセンター提供者が所有しているため、ハードウェアの管理・保守は提供側が対応します。
ホスティング方式のメリットとして、自社で設備を購入する必要がないため、初期費用の投資が不要、かつ、導入までのリードタイムが早いという点が挙げられます。ただし、機器にトラブルが発生した場合に自社で修復作業を行うことはできません。提供側の作業を待つしかないため、復旧予測を立てにくいといったデメリットがあります。
データセンターとクラウドサービスの違い
データセンターとクラウドは似た意味で使われることが多いですが、それぞれ明確に異なるものです。クラウドの正式名称は「クラウド・コンピューティング」といい、ユーザーがインターネットなどのネットワーク越しに、サーバー・ストレージなどのITリソースや、アプリケーションソフトウェアなどを利用できる仕組みのことです。この仕組みを用いて仮想的に提供されるサービスを「クラウドサービス」と称します。
データセンターとクラウドサービスの違いは、ハードウェア・ソフトウェアを誰が準備・管理するかにあります。データセンターはIT機器の設置場所を提供する施設のため、基本的にハードウェア・ソフトウェアは利用者自身が準備・管理する必要があります。
一方クラウドサービスは、インターネット等のネットワークを経由してハードウェア・ソフトウェアの機能を利用することができるサービスです。サーバー等のハードウェア・ソフトウェアはクラウドサービス事業者が準備するため、システムを一から購入・構築する手間や作業時間を削減できます。
システム環境を柔軟に構築できるのはデータセンター、機器の購入・構築の負担を軽減できるのはクラウドサービスです。
データセンター | クラウドサービス | |
---|---|---|
サービス内容 | サーバー・ネットワーク機器を設置する場所を提供 | サーバーの利用環境を、ネットワークを通じて提供 |
機器の購入 | 基本的にユーザー側で実施 | サービス提供側が実施 |
機器の運用・管理 | 基本的にユーザー側で実施 | サービス提供側が実施 |
カスタマイズ性 | 自社に合わせて設計できる | 仕様が決まっている場合が多い |
また、クラウドのサーバーはほとんどの場合データセンターに保管されているため、クラウドサービス利用者は間接的にデータセンターを利用していると言えます。
クラウドサービスと比較したデータセンターのメリット
-
IT機器やネットワークなどを自社で選定できる
クラウドサービスは、基本的にサービス提供者側が用意した環境を利用するものですので、自社にとって最適な性能を備えているとは限りません。それに対し、データセンターは自社に最適なIT機器やネットワークを選定することができます。
-
専用回線で大容量・高速通信の維持が可能
一般回線を使用するクラウドサービスでは、周囲の利用状況により通信速度が低下する可能性があります。一方、データセンターでは拠点間を専用回線で結び大容量・高速通信を維持することが可能です。
-
障害などが発生した際に、比較的早期の復旧が可能
クラウドサービスが停止した場合、多くの場合は復旧するまでただ待つしかありません。データセンターでは、ハウジングなら自社スタッフがすぐに復旧作業へ駆けつけることができ、ホスティングなら直接復旧作業を依頼することができます。
データセンターと比較したクラウドサービスのメリット
-
柔軟な利用が可能
すべてオンライン上でシステム構成することができ、利用したい分だけ購入するといったことが可能です。サービスを契約をすれば誰でも利用でき、AWS(Amazon Web Services)、Mcrosoft Azure、GCP(Google Cloud Platform)、さくらのクラウドなどが存在します。
-
リージョンが選択できる
リージョンとはサーバー機の置いてある物理的な地域の事です。
リージョンは利用者が選択することができ、例えば東京と大阪の2つの地域にサーバー機が配置されている場合2つのリージョンからどちらのサーバー機を使用するかを選択できます。リージョンを選択する基準はユーザーとの物理的な距離と可用性にあります。ユーザーとの距離が近ければ、それだけ通信の遅延が少なくなりパフォーマンスが向上します。また、離れたリージョンで2つのサーバーを稼働させれば、片方の地域が災害に見舞われた際もう片方のサーバーを稼働させることで可用性を向上することができます。
-
ハードウェアやネットワークの管理負担の軽減
クラウドサービスでは、物理的なサーバー機器やネットワーク設備の設置・維持に関する直接的な管理が不要です。これは、ハードウェアやネットワークの設定、更新、保守などをサービス提供企業が行うためです。利用者は、サービスの契約と設定により、必要なリソースを迅速に利用でき、ITインフラの運用に関わる複雑さやコストを大幅に削減することが可能です。ただし、アプリケーションレベルやデータ管理など、ソフトウェアに関する運用は利用者の責任範囲内にあります。このため、クラウドを利用する際には、セキュリティポリシーの設定やデータ保護の対策など、クラウド環境における運用管理の側面に注意を払う必要があります。
まとめ
データセンターの施設内容や利用方法についてや似た概念のクラウドと比較した内容も一緒に解説しました。データセンターはクラウドサービスのサーバー設置も担っているため、私たちが普段利用しているWebサービスの要であるといえますので、この機会にデータセンターについて理解を深めていただきたいと思います。
【番外編】USBも知らなかった私が独学でプログラミングを勉強してGAFAに入社するまでの話
プログラミング塾に半年通えば、一人前になれると思っているあなた。それ、勘違いですよ。「なぜ間違いなの?」「正しい勉強法とは何なの?」ITを学び始める全ての人に知って欲しい。そう思って書きました。是非読んでみてください。
「フリーランスエンジニア」
近年やっと世間に浸透した言葉だ。ひと昔まえ、終身雇用は当たり前で、大企業に就職することは一種のステータスだった。しかし、そんな時代も終わり「優秀な人材は転職する」ことが当たり前の時代となる。フリーランスエンジニアに高価値が付く現在、ネットを見ると「未経験でも年収400万以上」などと書いてある。これに釣られて、多くの人がフリーランスになろうとITの世界に入ってきている。私もその中の1人だ。数年前、USBも知らない状態からITの世界に没入し、そこから約2年間、毎日勉学を行なった。他人の何十倍も努力した。そして、企業研修やIT塾で数多くの受講生の指導経験も得た。そこで私は、伸びるエンジニアとそうでないエンジニアをたくさん見てきた。そして、稼げるエンジニア、稼げないエンジニアを見てきた。
「成功する人とそうでない人の違いは何か?」
私が出した答えは、「量産型エンジニアか否か」である。今のエンジニア市場には、量産型エンジニアが溢れている!!ここでの量産型エンジニアの定義は以下の通りである。
比較的簡単に学習可能なWebフレームワーク(WordPress, Rails)やPython等の知識はあるが、ITの基本概念を理解していないため、単調な作業しかこなすことができないエンジニアのこと。
多くの人がフリーランスエンジニアを目指す時代に中途半端な知識や技術力でこの世界に飛び込むと返って過酷な労働条件で働くことになる。そこで、エンジニアを目指すあなたがどう学習していくべきかを私の経験を交えて書こうと思った。続きはこちらから、、、、
エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。
関連記事
2020.02.25
完全未経験からエンジニアを目指す爆速勉強法
USBも知らなかった私が独学でプログラミングを勉強してGAFAに入社するまでの話
- キャリア・学習法
- エンジニア
2023.10.19
インフラエンジニアの仕事内容について解説
こちらはEnvaderの記事になります。
- インフラエンジニア
- ネットワーク
- AWS
2024.08.27
IPv6におけるCIDRの役割 IPv4との違いは?
この記事では、CIDRの基本概念を説明し、IPv4とIPv6での利用方法や役割の違いを詳しく解説することで、ネットワーク管理におけるCIDRの重要性を理解できるようにします。
- ネットワーク
2022.12.10
インフラエンジニアとは?
インフラエンジニアについて調べてみるとネガティブなワードが出てきますが実際はどうなっているのか気になりませんか?気になるインフラエンジニアのあれこれを紹介しておりますので、どんな職業なのかぜひ参考にしてみてくださいね
- インフラエンジニア
- ネットワーク