はじめに
セキュリティ対策は、現代のIT環境において欠かせない要素です。特にエンドポイントセキュリティは、企業や個人のデータを守るために重要な役割を果たしています。本記事では、EDR(Endpoint Detection and Response)とEPP(Endpoint Protection Platform)の違いについて詳しく解説します。
CroudStrikeの事件概要
2024年7月19日、CroudStrikeのセキュリティソフトウェアのアップデートが原因で、世界中のWindows PCがブルースクリーン(BSOD)を引き起こす大規模障害が発生しました。この事件は、850万台以上のデバイスに影響を及ぼし、多くの企業や個人がPCの操作不能に陥りました。この事件を通して、セキュリティ対策の重要性が改めて認識され、EDRとEPPの役割について考えるきっかけとなりました。
この記事では、EDRとEPPの基本的な概念、両者の違い、そして効果的なセキュリティ対策の選び方について説明します。これにより、エンドポイントセキュリティの理解を深め、最適な対策を見つける手助けをします。
EDRとは何か
一言で言うと、EDRは企業のエンドポイント(PCやサーバーなど)をリアルタイムで監視し、脅威を検知して対策を講じるためのシステムです。特に、テレワークが普及する現代の働き方において、社内外のネットワークに接続するエンドポイントを守るために重要です。
EDRの定義と基本機能
**EDR(Endpoint Detection and Response)**は、エンドポイントに侵入した脅威を検知し、対応するためのシステムです。これは、家の中に侵入者が入ってきた時に、すぐに見つけて追い出す警備員のような役割を果たします。
監視と検知
リアルタイムで端末やネットワークを監視し、不審な動きを検知する機能
隔離
感染したエンドポイントを他のネットワークから隔離する機能
調査と分析
ログ情報を収集して、攻撃の詳細を分析する機能
予防
ソフトウェアやアプリケーションのアップデート管理機能
代表的なEDR製品
以下は代表的なEDR製品です。
-
CrowdStrike Falcon
- リアルタイムでの脅威検知と対応
- 高度な分析機能とレポート作成
-
Carbon Black
- 詳細なログ収集と分析
- 脅威のリアルタイム検知と迅速な対応
-
Microsoft Defender for Endpoint
- Microsoftエコシステムとの統合
- 包括的なエンドポイント保護と管理
-
SentinelOne
- AIを活用した自動脅威検知と対応
- 高いスケーラビリティとパフォーマンス
これらの製品は、企業のセキュリティニーズに応じて選択することができます。
EPPとは何か
エンドポイントセキュリティの基本として広く利用されているのがEPP(Endpoint Protection Platform)です。EPPは、エンドポイントに対する侵入を未然に防ぐためのセキュリティ対策を提供します。これは、家のドアや窓に鍵をかけることで、侵入者を防ぐ防犯装置のような役割を果たします。ウイルス対策ソフトウェアとしても知られており、エンドポイントのセキュリティを総合的に保護します。
EPPの定義と基本機能
**EPP(Endpoint Protection Platform)**は、エンドポイントへの侵入を防ぐためのシステムです。従来のアンチウイルスソフトウェアに加え、様々なセキュリティ機能を統合しています。
既知の脅威の検知と防御
ウイルスやマルウェアの既知のパターンを認識し、これを防ぐ機能を持ちます。
パフォーマンス維持
端末の動作速度に影響を与えない軽量なスキャン機能を提供し、ユーザーがストレスなく使用できるように設計されています。
オフライン対応
パターンファイルの更新が不要なシステムで、オフライン環境でも有効に機能します。
代表的なEPP製品
よく知られているEPP製品には以下のようなものがあります:
-
Symantec Endpoint Protection
- 総合的なエンドポイント防御
- クラウドおよびオンプレミス環境での一貫したセキュリティ
-
McAfee Endpoint Security
- 高度な脅威防御機能
- 機械学習を用いたマルウェア検知
-
Kaspersky Endpoint Security
- 優れたウイルス検出率
- データ保護と暗号化機能
なぜEDRが必要になったのか
従来のEPPでは、既知の脅威を防ぐことができても、未知の脅威や高度な攻撃を完全に防ぐことは難しくなってきました。攻撃者が巧妙化する中で、侵入を前提とした対策が求められるようになり、これに応じる形でEDR(Endpoint Detection and Response)が注目されるようになりました。EDRは、エンドポイントに侵入した脅威を検知し、迅速に対応することで、被害を最小限に抑えることができます。
EPPとEDRの違い
それでは、EPPとEDRの違いを簡単に説明します。EPPはエンドポイントへの侵入を防ぐためのシステムで、既知の脅威に対する防御を提供します。一方、EDRは侵入後の脅威をリアルタイムで検知し、迅速に対応するためのシステムです。これにより、両者を組み合わせることで、より効果的なエンドポイントセキュリティを実現できます。
目的と機能の比較
EDRとEPPはそれぞれ異なる目的と機能を持ち、連携して使用することで効果的なエンドポイントセキュリティを提供します。
目的
EPPは侵入を防ぐことに重点を置き、EDRは侵入後の迅速な対応に焦点を当てます。EPPは、家に侵入者が入らないようにする鍵のようなものであり、EDRは侵入者が入った後に対応する警備員のような役割を果たします。
機能
EPPは既知の脅威の検知に強く、定義ファイルを利用してウイルスやマルウェアを検知します。一方、EDRはリアルタイムで端末を監視し、不審な動作を検知して迅速に対応する機能を持っています。
運用シナリオ
EPPは日常の保護に役立ち、普段の使用時にエンドポイントを守ります。例えば、定期的なスキャンを行い、既知のウイルスを検出して削除します。一方、EDRはインシデント発生時の対処に力を発揮し、リアルタイムで脅威を検知して隔離や対応を行います。これは、侵入者が家に入った後に、警報を鳴らし、侵入者を排除するような役割です。
導入のメリットとデメリット
EPPとEDRはそれぞれ異なる役割を持ちながらも、効果的なエンドポイントセキュリティを提供するために組み合わせて使用されることが多いです。以下では、それぞれのメリットとデメリットを把握しておきましょう。
EPPのメリットとデメリット
メリット
-
マルウェア感染の予防
既知のウイルスやマルウェアを効果的に防ぐ。 -
低負荷な運用
システムのパフォーマンスに与える影響が少ない。
デメリット
- 未知の脅威への対応が難しい
新たな攻撃手法や未知の脅威を検知するのが困難。
EDRのメリットとデメリット
メリット
-
リアルタイムでの脅威検知と対応
エンドポイントの不審な動作を即座に検知し、対応できる。 -
侵入後の詳細な分析と対策
攻撃の詳細を解析し、将来の防御策を強化できる。
デメリット
-
専門知識とリソースが必要
効果的に運用するには専門的な知識やリソースが求められる。 -
コストが高い
導入および運用にかかる費用が高額になることが多い。
組み合わせた効果
EPPとEDRを組み合わせて使用することで、総合的なセキュリティ対策が可能となります。EPPは既知の脅威からの防御を提供し、エンドポイントへの侵入を未然に防ぎます。一方、EDRは侵入後のリアルタイム検知と対応を行い、未知の脅威や高度な攻撃に対処します。これにより、EPPとEDRの両方を組み合わせることで、エンドポイントのセキュリティを強化し、より堅牢な防御体制を構築できます。
具体的な製品紹介と選定ポイント
EDRとEPPには多くの製品があり、選定の際には以下のポイントに注意する必要があります。
検知と分析の精度
製品の検知と分析の精度がどれだけ高いかを確認することが重要です。既知および未知の脅威を正確に検知し、詳細な分析を行える製品を選びましょう。
運用コストとリソース
導入および運用にかかるコストと、必要なリソースを考慮することも重要です。コストが高すぎたり、専門知識が必要すぎる製品は、運用が難しくなる可能性があります。
対応する脅威の範囲
製品が対応する脅威の範囲を確認し、どのような攻撃を防ぐことができるかを把握しましょう。幅広い脅威に対応できる製品が望ましいです。
導入のスケーラビリティ
企業の規模や成長に応じて、製品がスケーラブルであるかどうかを確認することも重要です。将来的な拡張が容易にできる製品を選びましょう。
サポートと更新の頻度
製品提供者のサポート体制や、ソフトウェアの更新頻度も重要な選定ポイントです。迅速なサポートと定期的な更新が行われる製品を選ぶことで、最新の脅威に対応できます。
実際のユーザー評価とレビュー
他の企業やユーザーからの評価やレビューも参考にしましょう。実際の使用感や、導入後の効果についてのフィードバックは、製品選定において貴重な情報となります。
これらのポイントを総合的に考慮し、自社のニーズに最適なEDRおよびEPP製品を選択することが重要です。
まとめ
EDRとEPPを組み合わせることで、エンドポイントセキュリティを強化し、より効果的な防御体制を築くことができます。この記事では、EDRとEPPの基本的な概念、両者の違い、導入のメリットとデメリット、具体的な製品選定のポイントについて説明しました。
EPPは既知の脅威を防ぐことに特化しており、システムのパフォーマンスに与える影響が少ないため、日常の保護に適しています。一方、EDRは未知の脅威や高度な攻撃に対してリアルタイムで対応し、侵入後の詳細な分析を行うため、インシデント発生時の迅速な対応が可能です。
CroudStrike事件は、その必要性を改めて認識させる出来事でした。この事件は、EDRが社会に広く使われている重要な技術であることを示しています。EDRとEPPを効果的に組み合わせることで、エンドポイントのセキュリティを強化し、攻撃からの防御を一層強固にすることができます。
今後のエンドポイントセキュリティの展望を見据え、最適な対策を選択しましょう。この記事を通して、読者がEDRとEPPの違いを理解し、適切なセキュリティ対策を選択するための参考になることを目指します。
まとめ
EDRとEPPを組み合わせることで、エンドポイントセキュリティを強化し、より効果的な防御体制を築くことができます。この記事では、EDRとEPPの基本的な概念、両者の違い、導入のメリットとデメリット、具体的な製品選定のポイントについて説明しました。
EPPは既知の脅威を防ぐことに特化しており、システムのパフォーマンスに与える影響が少ないため、日常の保護に適しています。一方、EDRは未知の脅威や高度な攻撃に対してリアルタイムで対応し、侵入後の詳細な分析を行うため、インシデント発生時の迅速な対応が可能です【62†source】【65†source】。
CroudStrike事件は、その必要性を改めて認識させる出来事でした。この事件は、EDRが社会に広く使われている重要な技術であることを示しています。EDRとEPPを効果的に組み合わせることで、エンドポイントのセキュリティを強化し、攻撃からの防御を一層強固にすることができます【64†source】【63†source】。
今後のエンドポイントセキュリティの発展を考えながら、最適な対策を選びましょう。この記事が、EDRとEPPの違いを理解し、適切なセキュリティ対策を選ぶ手助けとなることを願っています。
参考資料
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エンベーダー編集部
エンベーダーは、ITスクールRareTECHのインフラ学習教材として誕生しました。 「遊びながらインフラエンジニアへ」をコンセプトに、インフラへの学習ハードルを下げるツールとして運営されています。
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