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2024.06.02

Gitコマンド「git fsck」とは?リポジトリの安定を保つサポートツールを紹介

はじめに

アプリ開発において「Git」は必須スキルになっています。Gitには様々なコマンドが存在し、それらを適切に活用することで、開発作業の安全性を高めるとともに、効率化を図ることができます。

プログラミングを学習する過程で「整合性」という言葉を目にしたことはありませんか?開発をスムーズに進めるためには、システムやデータの整合性を保つことが重要です。これはGitの運用においても例外ではなく、整合性を維持することでGitの安定した運用が可能になります。多くの開発現場では、リポジトリの整合性をチェックするために「git fsck」コマンドが定期的に使用されています。今回は、安定したリポジトリ運用をサポートする「git fsck」を解説します。様々なGitコマンドを習得し、Gitマスターを目指しましょう!

システムの整合性について

まずはじめに、整合性について理解しておきましょう。システムにおける整合性は、データが正確で一貫性を保ちつつ、安全に管理されている状態を指します。例えば、データベースの整合性では、登録されたデータが正確で完全であること、さらにテーブル間でのデータ一貫性が保たれ、データベース全体で矛盾が生じていないことが求められます。整合性が保たれることにより、システムの信頼性が向上し、業務の効率化や高度なセキュリティの実現が可能になります。

「git fsck」について

git fsckコマンドは、リポジトリの整合性をチェックをするツールです。「fsck」とは「file system consistency check」の略で、Gitリポジトリ内のオブジェクト、コミット、ツリー、ブロブ、タグが適切なフォーマットで正しくリンクされているかを検証します。このコマンドを使用すると、欠落しているオブジェクト、破損したリンク、その他の潜在的な問題を発見することができます。これは、Gitのリポジトリの安定性を保ち、プロジェクトの運用を円滑に進めることをサポートします。

「git fsck」主な機能

  • オブジェクトの整合性チェック

    コミット、ツリー、ブロブ、タグなどの Git オブジェクトが正しく保存されているかを確認します。オブジェクトが破損している場合、その内容が報告されます。

  • リファレンスの整合性チェック

    ブランチやタグが指しているオブジェクトが存在するかを確認します。存在しないオブジェクトを指している場合、その内容が報告されます。

  • リポジトリの接続性チェック

    オブジェクト間のリンクが正しく形成されているかを検証します。例えば、特定のコミットが正確な親コミットを指しているか、ツリーが適切なブロブを含んでいるかなどを確認します。

fsckコマンドとの違い

git fsckコマンドと聞いて、Unix系コマンドのfsckを思い浮かべる方もいるかと思います。fsckも整合性をチェックするコマンドですが、git fsckとは異なります。

fsckはファイルシステムのエラーを検査、報告、修正するために使用されます。また、ファイルシステムの整合性をチェックし、可能であれば修復も行います。例えば、ファイルシステムが予期せずシャットダウンした後などに使用されます。

一方、git fsckはGitリポジトリ専用に設計されており、リポジトリ内の正確さやリンクの整合性などを検証します。これは、リポジトリの整合性を保つために特化しており、修復ではなく診断に重点を置いています。

git fsckはGitリポジトリの構造と内容のチェックに特化しているのに対し、fsckはOSのファイルシステムの整合性と修復に焦点を当てたツールです。

「git fsck」コマンドの開発現場での活用例

git fsckは、Gitリポジトリの整合性を確認するためのツールであることが分かりました。このコマンドは、特にリポジトリが大きくなりがちな大規模プロジェクトで、定期的に使用されています。以下に、どのようにしてgit fsckが活用され、開発の運用を円滑に進めるのに役立つかを解説します。

リポジトリの状態チェック

チームで大規模な開発を進めている時など、定期的にリポジトリの状態をチェックします。リポジトリ内のデータが膨大になった場合、データ破損のリスクが高まります。そのような問題を早期に発見するため、定期的にgit fsckを使用し、リポジトリ内の状態をチェックします。

データ破損の調査

コマンドが実行できないなど、リポジトリ内で問題が発生しデータが破損している疑いがある場合、git fsckを使って詳細な調査を行います。具体的には、どのオブジェクトが破損しているか、どのリファレンスに不具合があるかを特定するのに役立ちます。

切り離されたコミットの検索

開発途中で発生した切り離されたコミット(dangling commit)の復旧が必要になった際に、該当のオブジェクトやコミットIDの調査を行います。切り離されたコミットは、どのブランチにも属さないことが理由で参照できない状態ですが、git fsckを使用することでコミットIDを調べることが可能です。

切り離されたコミット(dangling commit)については、以下の記事の「Gitリポジトリ内の不要なデータとは」セクションで詳しく解説しています。

https://envader.plus/article/393

「git fsck」の使い方

git fsckコマンドは、開発の安定性を保つために様々な場面で使用されていることが分かりました。次に、どのようにgit fsckを使用してリポジトリ内の状態をチェックし、リポジトリの安全を保つかについて学んでいきましょう。リポジトリのオブジェクトが正しくフォーマットされ、適切にリンクされているか確認します。このコマンドの使い方を知る事で、リポジトリの潜在的な問題をチェックすることが可能になります。

リポジトリの整合性をチェックするには、以下のコマンドを実行します。

git fsck

実行後、何かの不具合がある場合はレポートが出力されます。例えば、以下のようなメッセージが表示されることがあります。

  • missing blob <ハッシュ値>

    ハッシュで指定されたブロブオブジェクトが見つからない

  • dangling commit <ハッシュ値>

    コミットツリーやタグから参照されていないコミット

  • dangling blob <ハッシュ値>

    コミットツリーやタグから参照されていないブロブオブジェクト

  • unreachable tree <ハッシュ値>

    リファレンスから到達できないツリーオブジェクト

以下は実行例の出力結果です。以下の結果では、参照できないブロブがいくつかあり、それらのハッシュ値が表示されています。

git fsck
Checking object directories: 100% (256/256), done.
Checking objects: 100% (1069/1069), done.
dangling blob 2a312341bb380e8ab0f09d6d181c20c3d0094403
dangling blob 0ca37ea327313d094c995f845c201c409e91f9ca
dangling blob a4832a2b2b4c44a5765bebcd6ef49997cadaff0f
dangling blob b8d8c830bc198d94223771017ea632519c8a880b
Verifying commits in commit graph: 100% (334/334), done.

「git fsck」のオプション紹介

項目説明
--fullリポジトリ内の全てのオブジェクトをチェック
--unreachable参照されていないオブジェクトを出力
--lost-found参照されていないオブジェクトをディレクトリに書き出す
--no-dangling参照されていないオブジェクトのチェックを除外

--full

リポジトリ内の全てのオブジェクトをチェックします。このオプションは時間がかかることがありますが、全てのオブジェクトがチェックされるため、詳細な診断が可能です。

git fsck --full

--unreachable

参照されていないオブジェクトを特定して出力します。参照されていないオブジェクトの確認のみをする際に使用されます。

git fsck --unreachable

--lost-found

参照されていないオブジェクトを.git/lost-foundディレクトリに物理的に書き出します。このオプションを使用すると、切り離されたコミットなどを復旧するために利用できる具体的なファイルが作成されます。

git fsck --lost-found

--no-dangling

参照されていないオブジェクトのチェックを除外します。このオプションを使用すると、リファレンスから参照できないオブジェクトを無視して、その他の整合性チェックだけを行います。これにより、他のより重要な問題に焦点を当てたチェックを行うことができます。

git fsck --no-dangling

切り離されたコミットを復旧する方法

最後に切り離されたコミットを復旧する方法を紹介します。

Gitのgit fsckコマンドを使用して、切り離されたコミット(dangling commit)を発見し、それをmainブランチへ復旧していきます。この手順は、重要なコミットが誤って参照できなくなった場合に役立ちます。

  1. 切り離されたコミットの識別

    まず、リポジトリでgit fsckを実行し、切り離されたコミットを特定します。--lost-foundオプションを使用し、切り離されたコミットを.git/lost-found/commit/ディレクトリに出力します。

    git fsck --lost-found

    下記は実行例です。dangling commitが1つある事がわかります。

    git fsck --lost-found
    
    Checking object directories: 100% (256/256), done.
    Checking objects: 100% (3/3), done.
    dangling commit ee523db912490044c8606a66bb035951fe513d69

    実行後、以下の階層に切り離されたコミットのファイルが書き出されました。

  2. コミットの内容の確認

    次に、切り離されたコミットの内容を確認します。識別されたコミットのハッシュ値を使用すると、コミットの詳細を確認できます。これにより、コミットに含まれる変更が何であるかを確認できます。

    git show [コミットハッシュ値]

    以下は切り離されたコミットの内容です。

    commit ee523db912490044c8606a66bb035951fe513d69
    Author: Alice <alice@sample--sample.com>
    Date:   Thu May XX XX:XX:XX 202X +0900
    
        New branch commit
    
    diff --git a/file.txt b/file.txt
    index aced11e..f6b99bd 100644
    --- a/file.txt
    +++ b/file.txt
    @@ -1,2 +1,3 @@
     Hello World
     Another change
    +Changes in new branch
  3. コミットの復旧

    コミットの内容が復旧するターゲットのコミットであれば、そのコミットにチェックアウトして、新しいブランチを作成します。この作業で、切り離されたコミットがブランチに紐付き、gitから参照されるようになります。

    git checkout -b [ブランチ名] [コミットハッシュ値]

    以下は実行例です。作成するブランチ名と調べたコミットハッシュ値を入力します。

    git checkout -b fix-branch ee523
    Switched to a new branch 'fix-branch'
  4. 変更をメインブランチにマージ

    復旧したコミットがメインブランチに必要な場合は、通常のGitワークフローを行い、メインブランチにマージすることができます。

    git checkout main
    git merge [復旧ブランチ名]

    以下は実行結果です。切り離されたコミットの変更内容がmainブランチにマージされ、コミットの復旧が完了しました。

    git merge fix-branch
    Updating 1882fa2..ee523db
    Fast-forward
     file.txt   | 3 +++
     1 files changed, 3 insertions(+)
     create mode 100644 file.txt

注意点

切り離されたコミットは時として重要な変更を含んでいることがありますが、それらがリポジトリの参照対象外になった理由があるかもしれません。復旧する前に、なぜそれが切り離されたのかを考慮することが重要です。また、復旧作業を行う前には、リポジトリのバックアップを取っておくことをお勧めします。

この記事で学んだこと

この記事を通じて、「git fsck」に関連する様々な知識を得ることができました。簡単に振り返ってみましょう。

「git fsck」コマンドとは?

git fsckコマンドは、リポジトリの整合性をチェックをするツールです。このコマンドを使用すると、リポジトリの様々な問題を発見することができます。これは、Gitのリポジトリの安定性を保ち、プロジェクトの運用を円滑に進めるために不可欠です。

「git fsck」コマンドの活用例

  • リポジトリの状態チェック

    チームで大規模な開発を進めている時など、定期的にリポジトリの状態をチェックします。リポジトリの整合性を保つため、定期的にgit fsckを使用し、リポジトリ内の状態をチェックします。

  • データ破損の調査

    コマンドが実行できないなど、リポジトリ内で問題が発生しデータが破損している疑いがある場合、git fsckを使って詳細な調査を行います。

  • 切り離されたコミットの検索

    開発途中で発生した切り離されたコミット(dangling commit)のコミットIDを、git fsckを使用し調べることが可能です。

この記事では「git fsck」の基本から実際の利用法まで、その活用方法を詳しく解説してきました。ぜひこのコマンドを日々の学習に取り込み、実践を積んで理解を深めていきましょう!

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エンベーダー編集部

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